日本で一番多い「やさしい性格のお湯・単純温泉」。「単純」なんて言葉が入っているものだから、よく誤解を受けるんだよな。
一緒に温泉に出かけた仲間も、「このお湯、透明で匂いもないし効くのかなあ〜?」なんて言ってるし、とある温泉宿の主人も、「単純温泉だとレベルが低い湯質のように思われちゃいそうでさあ…」とぼやいてる。
しかし、私は声を大にして言いたい!
「単純温泉をあなどってはいけない!名湯と言っても過言ではないのだ」と。それでは、単純温泉がどんな温泉なのかを理解してもらうために、まずは定義から。
単純温泉とは
温度は25度以上
含まれているミネラルがお湯1キログラム中、1グラム以下
(鉱泉分析法指針より)
つまりは含まれている成分が薄い温泉なんだけれど、数々の温泉本を紐解いてみると、どの本にも「単純温泉には昔からの名湯が多い」って書いてある。
たとえば山梨県の名湯・下部温泉。ぬる湯の単純温泉で、古くは武田信玄の隠し湯、つまり武将たちが傷を癒したんだな。ヨーロッパの温泉でも「兵士の湯」と言われているのは単純温泉。世の東西を問わず傷ついた兵士が体を癒していたのは単純温泉が多いんだ。
一方、北海道の名湯、カルルス温泉は昔から「心の病」に効能があると言われてきた。
2014年7月に改正された泉質別適応症でも、単純温泉は新たに「自律神経不安定症や不眠症、うつ状態」、つまりはメンタルの健康に良い温泉ってことになった。昔から体験的に言われていた効能が晴れて認められたってことだな。
単純温泉は、赤ちゃんからお年寄りまで、敏感肌の人でも、体が疲れた時でも入浴ができる。誰でも入れて、気持ちが軽くなるっていうのは温泉の基本だよな。
妊婦さんも温泉に入れるようになった!
誰でも入れると言えば、32年ぶりに実施された温泉の適応症や禁忌症の改正で、今までNGだった妊婦さんの温泉入浴が、泉質に限らずOKになった。新聞でも報道されたけれど妊娠中(初期と末期)に温泉に入ってはいけないという医学的な根拠は実は見つからなかったんだ。酸性泉や硫黄泉の適応症にアトピー性皮膚炎が加わったのも時代にマッチしているよな。
温泉って時代によって人が定める適応症も変わってくる。好きな泉質も若い頃とは違ってきていて、最期に行き着くのは単純温泉かなあ。温泉の基本である優しさがあるんだよな。
今回のまとめ
32年ぶりの改正で単純温泉はメンタルへの効能が適応となった。薄くて優しい単純なお湯だからこそ、複雑な体や心の隅々にまで届く。
温泉おじさん 本名:温泉湯太郎
華の60代。第2の人生を輝かせるべく温泉道にまい進中。 「湯太郎さぁん、一緒に温泉行きましょうよ」なんて、妙齢なご婦人方からのお誘いに応えられるよう必死に温泉について勉強中。熟年の星めざして湯あたりしない程度にがんばっぺー。