2017.04.13
赤レンガや中華街、山手・元町に山下公園などなど、おでかけスポットの宝庫・横浜。しかし、宝庫すぎるがゆえプランをなかなか絞り切れない。ガイドブックがおすすめしている観光コースを踏襲するのもそれはそれで超楽しいわけだが、せっかくなら自分にしかできない旅がしたい!
そこで、今回は横浜の「占い師」に、“行くべきスポット”を指南していただくことにした。
中華街で人気の占いの館へ
占い師は個々のパーソナルな情報から開運のための行動を指南する。ならば、その人にとって運気の良いスポットを占ってもらい、実際にそこを巡れば「唯一無二の開運旅」になることだろう。冒頭、話がやや飛躍したが、そういうことだ。
都合の良いことに、横浜には有名な占いの館がたくさんある。今回は中華街にある「愛梨 本店」を訪ねてみた。
なお、今回の占い旅にお付き合いいただくのは、山口しずかさん。会社員の傍ら、漫画やイラストの仕事もしている。
「一人でパワースポットに行ったら閉まってた」「鳥のフンが年3回落ちてきた」など、地味な不幸に見舞われることが多いそうなので、この機会にぜひ運気を上げてもらいたい。
というわけで、さっそく占い開始。
こちら、いかにも「当たりそうな」たたずまいのsayu先生。西洋占星術と暦歴をブレンドした、独自の占星術を駆使する。名前、生年月日、生まれた時間、出生地の情報だけで、これまでどうやって生きてきたか? いま何をしたらいいのか?「ぜんぶわかっちゃう」そうだ。
sayu先生「しずかさんね。……あなたは我儘ですね。あと、同性の友達がいません」
のっけからなかなか辛辣だが、山口さんのメンタルは大丈夫だろうか?
「当たってる!」
当たってんのかよ! それは何より。さらに……
sayu先生「『娯楽の部屋』の中に仕事がありますね。好きなことを仕事にしてしまうタイプです」
「そのとおりです!(なんでわかるの……?)」
内面をズバズバ言い当てられ、戸惑いつつも少し嬉しそうな山口さん。彼女がすっかりsayu先生に心酔しきったところで、まずは運勢などを占っていただこう。
「2018年に入る頃に仕事で葛藤が起きます。恋愛も絡んできて、仕事をとるか相手をとるか、みたいな感覚になっていくのが2018年の1月から春にかけて。ちょっとだけ、精神的にきつい時期になるかもしれません。ただ、ここで決めたことは先々の20年に全部『結果』として出てくる。生きることに対して、そんなに苦しまないタイプですね」
sayu先生によれば、山口さんはなかなかの強運の持ち主のようだ。本人にその自覚はないようだが、鳥の糞が落ちてきたのもあるいは何かしらの吉兆だったのかもしれない。
では、さらに運気を上げるために山口さんが向かうべきスポットはどこなのか?
彼女にとって吉となる方角、スポット、行動を占っていただいた。
・太陽の軌道、特に東と東南に吉がある
・特に太陽が昇っている日中、東に行くと幸せを呼ぶ(風を感じられる場所なら、なおよし)
・今の時期は「高い場所」や「海が見える場所」に行くと気持ちがラクになる
・また、水にも吉があるので、高いところから海を見下ろすような場所が最高
・横浜だと「山下公園」が位置的にすごくいい
・揺れる葉っぱの音を聞くだけで嬉しくなるはず(あなたはネコちゃんと一緒だから)
・食べたいものを食べたい時に食べるのがいい
・旅先ではその土地の名物のもの、特に麺類などを食べるといい
・キラキラしているものや揺れているもの、光っているものは運気を上げる。シルバーよりゴールドがいい
かなり具体的である。これだけヒントがあれば、最高の開運プランが組めそうだ。
というわけでさっそく最初のスポットに向かおうとしたのだが、さっきから山口さんの様子がなんだかおかしい。
「すみません……、こ、腰が…腰が痛いです!」
どうやら山口さん、朝から激しい腰痛を抱えていたそうだが、撮影のために我慢していたという。
「本当にすみません…なんで、よりによって今日なんだろう…」
しばし安静にして回復を待ってみたが、腰の痛みは増すばかり。とうとう一歩も動けなくなってしまったのでタクシーで病院へ向かった。
「今まで腰痛なんて一回もなかったのに……、本当に申し訳ありません。最近、本当に災難続きなんですよね。お母さんも体調崩すし、妹は車で事故るし、お父さんは犬に嚙まれるし……」
山口よ、もうやめてくれ、泣いちゃうから。
ちなみに、明日は恋人の親に始めて会いに行く大事な日らしい。どれだけついてないんだ、山口! 彼女に必要なのは開運よりお祓いだったのかもしれない。
ちなみに、診断の結果は「捻挫」。痛み止めの注射を打って痛みはマシになったようだが、大事をとって彼女にはここで離脱してもらうことにした。
ひとまず大事に至らなくて何よりだが、しかし困った。開運旅の主役がいなくなってしまった。腰がいつよくなるかもわからないため、再開のメドも読めない。
そこで、今回はやむなく代役を立てることにした。(山口さんの)開運スポットを、他の誰かに代わりに巡ってもらうのだ。
この、いかにも「代役」という顔をした男は小野洋平。筆者が代表を務める「やじろべえ」という会社の社員ライターで、山口さんとは友人関係にある。この日は撮影係として同行していたのだが、急遽演者側に回ることに。
当然ながら、小野と山口さんは生年月日も生まれた場所も、そもそも性別からして違うため「山口さんの開運スポット」を巡ったところで彼には何のメリットもない。あくまで「山口さんの運気を上げるための代役」である。彼が巡ったところで山口さんの運気が上がるかどうかは不明だが。
ともあれ、sayu先生のお導きに従い、まずは「高いところ」にやってきた小野。横浜港のシンボル「横浜マリンタワー」の展望台だ。横浜の「東側」、「高い場所」、「海が見える」という(山口さんの)開運要素を兼ね備える、(山口さんにとっては)この上ないパワースポットである。
―― 小野くん、どうですか? 開運の気配はありますか?
「たぶん(開運)してないんじゃないですかね。それより、高所恐怖症なので早く地上に帰りたいです」
なんともつれない反応である。自分に無関係のパワースポットをいきなりめぐらされて怒っているのかもしれない。
ご機嫌を取るため、マリンタワーのかっこいい記念メダルを買ってあげることにした。
そういえば、「キラキラしているものや揺れているもの、光っているものは運気を上げる。シルバーよりゴールドがいい」とsayu先生は言っていた。これはちょうどいい。メダルは金色だし、ペンダントにすれば首元で揺れる。
なお、メダルには日付と名前が刻印できるので山口さんのファーストネーム「SHIZUKA」の名を刻んだ。このメダルに「しずか」の開運パワーを集めていこう。
―― これで「しずか」の運気も上がるかな?
「どうですかね……。僕は『しずか』ではないので」
相変わらず反応が悪い。代役がこの調子では山口さんの運気も上がるまい。そこで、代役としての自覚を促すために、これからは小野を「しずか」として扱うことにする。
果たして運気は上がるのか?!次なるパワースポット山下公園へ【続きをみる】
榎並紀行(やじろべえ)
編集プロダクション「やじろべえ」代表。旅行ガイド本の編集をしたり、インターネットで旅の記事を書いています。「紀行」なんて、えらそうな名前ですみません。名前に負けない紀行文を、いつか書きたいと思います。Twitter:@noriyukienami