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2018.02.12

私のひとり旅のはじめ方。最初はみんな絶対怖い(伊佐知美寄稿文)

「そろそろひとりでできるもん」と、交通手段と宿を個人手配する旅を、私は26歳で始める。最初は、タイとカンボジアへの9日程度の旅。

そして、29歳。私はスマホを片手に、UberやAirbnb、GoogleMapなどのアプリや新生銀行の国際キャッシュカード等のインフラ発達を経て、「女性がひとりで旅をしやすい全盛期のはじまり」の季節に、世界一周に出ることになる。「どうしても20代のうちに世界が見たい」と、やっとやっと、私は人生を賭けた夢の道に飛び出した。

見知らぬ街をひとり歩くからこそ、いらないものが全部剥がれる

「ひとりで旅をする」というと、決まって「寂しくない?」「怖くない?」とよく聞かれる。

「寂しいに決まってるじゃないか!」と、私は笑いながら答える。

だって寂しいもの。国内ならまだしも、海外だと怖いことだってたくさんあるし、ひったくり予防で車が通らない方の腕で鞄を持ったり、大通り沿いに宿をとったり。夜は街を歩きたい気持ちをぐっと抑えて、ひとり部屋に引きこもっていたりする。

「取り越し苦労」がないのがひとり旅の特徴だ。念には念を。油断は一生の後悔を、きっと呼ぶ。

けれどそれらを飛び越えた先の世界で、私は「かけがえのない幸せ」を見つけてゆく。

360度どこへ行ってもいいし、行かなくてもいい。私がどこにいるか誰も知らないし、誰も知りたがりもしなかった。そのくせ目の前にいる異国の人たちは、私の目を見て笑いかける。

四季の移り変わりに合わせて、好きなときに心ときめく街へ出かけていく。荷物は小さなリュックと機内持ち込みサイズのスーツケースだけ。身軽で、空白をたくさん持って歩いたら、空いたスペースに思いもよらなかった出会いが滑り込んでくる。それが私たちのひとり旅。

その昔「自分探し」なんて言葉が流行ったけれど、ひとり旅なんかしても自分は見つからない。本当に望むことは、いつも一番そばにある。……なんて気づくのは、ずっとずっと後だけど。

ひとりで世界を歩くこと。
今までの常識を一つひとつ剥がすこと。

フラットな目線で自由に見たら、自分を縛っていたのはほかでもない自分だと気づくはず。

選択肢は無数にあって、じつは私たちはそれを毎日「選んで」いる。

ひとり旅は、結局世界の美しさを無言で見つめながら、自分自身と向き合う作業だ。旅先でとる何気ない行動に、人生の重要なキーが眠っていると私は想う。

寂しがりで怖がりで、誰かにいつも構ってほしい私たちだからこそ、「ひとり旅」という響きに惹かれたときは、勇気を持って飛び出してみたらいい。

何よりもひとり旅の「非日常」の刺激は、帰ってからの「日常」をより豊かにするために存在する。

さぁ今から、どこへ行こう? そして何を選んで生きていこう? 

見知らぬ街で私に会ったら、いつか話しかけてみてほしい。「互いにひとり旅ですね」と、目を見た瞬間にきっと分かり合えるはずだから。

伊佐知美(いさともみ)  伊佐知美(いさともみ)

旅する『灯台もと暮らし』編集長、ライター、フォトグラファー。1986年新潟県生まれ、横浜市立大学卒。三井住友VISAカード、講談社勤務を経てWaseiに入社。2016年4月より世界一周の旅へ。オンラインSlackコミュニティ「#旅と写真と文章と」主宰、世田谷のトラベラーズハウス「えいとびたー」住人。近著に『移住女子』(新潮社)。

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