東日本大震災から8年。3.11から毎月東北へ出かけて写真を撮り続けている、東京生まれ東京育ちの写真家石井麻木さん。
初めて被災地に足を運んだ時の事、そしてその後毎月通い続けて東北を撮り続けていく中で感じる、石井さんを魅了する東北の美しさやあたたかさについて、インタビューに答えてくださいました。
東北旅行に行ったことのない人、震災後東北に行っていなかった人も、美しい写真とともにぜひお読みください。
写真は「写心」。悲しみと喜びを撮り続けて。
東日本大震災から今年で8年。あの日から欠かさず毎月の月命日には東北へ出かけ、写真を撮り続けています。
初めて被災地へ足を運んだのは震災直後のこと。居ても立っても居られなくなり車に必要物資を積めるだけ積んで現地へ向かいました。私は写真家なので常にカメラと一緒ですが、当時はどうしてもシャッターを切ることができなかった。深い悲しみの中にいる人々にカメラを向けてはいけないと思ったんです。時に写真は暴力になる。そっとしておいてほしいという声、現状をありのまま残してほしいという声…葛藤の日々でした。
そんな時、お手伝いで宮城県亘理町を訪れた際にあるご夫婦に出会いました。家は流されてしまい着の身着のまま逃げ、軽トラックで1カ月以上も寝泊まりしているとのこと。
「新しい一歩を踏み出したい。出会えた記念に一枚撮影してもらえませんか」と思いがけず声をかけられて。2人とも力強い素敵な笑顔でした。
ああ、写真の力ってすごいなと。今を写すのは悲しいことばかりではないのだ、撮り続けよう…写真家として果たすべき役割が見えた瞬間でした。
心凪ぐような美しい情景。震災後も変わらないもの。
実は写真を始めたばかりの17歳の頃、カメラを持って東北に一人旅へ出たことがありました。何も計画せずに10日間、本当に突発的にふらっと(笑)。絵描きの母が宮沢賢治と作品を取り巻く東北の風景が好きで、子どもの頃から話を聴いていた影響でしょうか。
岩手県~青森県を巡り、岩木山、十和田湖、岩手山、浄土ヶ浜…一人で黙々とひたすら美しい風景と対峙しました。とにかく雄大で大きな存在の景色に圧倒されて。まだフィルムカメラで写していた時代、気がつけば撮影フィルムは10本を超えていました。
東北は初めて訪れた場所なのに何だか無性に居心地がよく、無心にシャッターを切る時間はすっと心が穏やかになりました。今思えば、この頃から東北との不思議な縁、心惹かれるものを感じていたのかもしれません。
震災後、出会った人々とともに、あるがままの光景や自然も多く撮影してきました。自分にとって印象深く残っているのは、凄惨な光景よりも震災前と変わらずにあり続ける自然の生命力の強さ。鮮やかな緑と花々、目の覚めるような海と空のブルー、湖を茜色に染める夕陽…。
優しく温かな人々とともに寄り添う東北の自然もまた、美しく尊い。変わりゆくもの、変わらないもの。そこに存在する空気、温度、人々、すべてが愛おしくて。次の訪問が楽しみで仕方ないです。
写真家 石井麻木 プロフィール
生まれも育ちも東京で、もともと東北はゆかりのある場所ではありませんでしたが、1年、また1年と通い続けるうちに「会いたい人に会いに帰る」大きな家族が待つ故郷のような感覚に。
仮設住宅でごはんを作って待っていてくれるおばあちゃん、「おかえり!」と笑顔で飛びついてきてくれる子ども達。今は東北のあちこちに、待っていてくれる人がたくさんいます。
一緒に笑いながら過ごせる時間を大切に、今この瞬間と思いを抱えながら前を向いて生きる人々の様々な表情を残したくて、写真を撮り続けています。
[Profile]東京都生まれ。高校卒業後から写真家として活動。東日本大震災直後から毎月東北に通い写真を撮り続けている。写真集『3.11からの手紙/音の声』https://www.311tegami.com/
※この記事は2019年9月時点での情報です
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