「彼岸花(ヒガンバナ)」が咲いているのを見ると秋を感じる人も多いのでは。その名前の由来や意味、別名、英語での表記、開花時期など、彼岸花ってどんな花?に迫ります。
赤のイメージが強い花だけど他の色もあるの?球根に毒があるって本当?花言葉は?など徹底解説。
彼岸花(ヒガンバナ)とは
彼岸花とは、ヒガンバナ科・ヒガンバナ属(リコリス属)の多年草で球根植物です。道端や人里に近い川岸、田のあぜ道などに群生し、夏の終わりから秋にかけて咲きます。
彼岸花をよく見てみると、高さ30cm~50cmの長い茎に大きな花がポツンと咲いています。では彼岸花には葉はないの? いえいえ、ちゃんとあります!
彼岸花の大きな特徴は、一般的な花と少し違うその生態。彼岸花は球根から花が出てきて、その花が枯れた後に葉が成長します。だから葉がない状態で花が咲いているのです。花と葉を同時に見ることができない事から「葉見ず花見ず」と言われ、昔の人は恐れをなしたとか。
実は冬から春にはちゃんと葉が繁り、花をつけない寒い季節にしっかり栄養を球根に貯えているのです。多くの植物は春に芽を出し、夏に葉を繁らせ秋に枯れますが、彼岸花はその逆。冬に葉を繁らせ春に枯れ、秋に花を咲かせます。
彼岸花の名前の由来と別名は?
一般的に呼ばれている「彼岸花(ヒガンバナ)」は、秋の彼岸の頃に開花することにちなんだ名前です。毒のあるこの植物を食べた後には「彼岸」=「あの世(死)」しかない、ということに由来するという説も。
英語では「Red spider lily(レッドスパイダーリリー)」「Hurricane lily(ハリケーンリリー)」「Red magic lily(レッドマジックリリー)」などと呼ばれます。
彼岸花は別名が多いことで知られています。その数、なんと1000以上とも。
一番多く耳にするのは「曼珠沙華(マンジュシャゲ)」ではないでしょうか。法華経などの仏典に由来し、梵語で「紅色の花」を意味すると言われています。その他、仏具の天蓋に似ていることから「天蓋花(テンガイバナ)」、学名の「Lycoris radiata(リコリス・ラジアータ)」から「リコリス」などの別名もあります。
「彼岸」=「あの世(死)」から不吉な言葉をイメージする別名がたくさんあります。
例えば、死人花(シビトバナ)、地獄花(ジゴクバナ)、幽霊花(ユウレイバナ)、剃刀花(カミソリバナ)、狐花(キツネバナ)、捨子花(ステゴバナ)、毒花(ドクバナ)、雷花(カミナリバナ)、痺れ花(シビレバナ)、葉見ず花見ず(ハミズハナミズ)。
どの別名も良いイメージとは言えませんが、たくさんの別名があるということは、それだけ人々に親しまれてきた花ということではないでしょうか。
ちなみに「曼珠沙華」とはサンスクリット語で「天界に咲く花」「見る者の心を柔軟にする」という意味も。「赤い花」「天上の花」として、めでたい兆しとされることもあります。
彼岸花の種類・色
赤色の彼岸花
日本で多く見ることができる彼岸花の色は「赤」。一般的に流通しているものは、赤い花が咲く「リコリス・ラディアータ」と呼ばれる品種です。
花びらの色は品種改良が進み、「赤」以外にもとても美しい彼岸花があります。
白色の彼岸花
白い彼岸花は、「シロバナマンジュシャゲ」、学名から「アルビフローラ」と呼ばれることもあります。花びらの反り返りが緩やかな柔らかい印象の品種です。
花びらがクリーム色の「リコリスニアホワイト」、白色の花びらにピンクの筋か入った「リコリスアルビフローラ」という品種もあります。
黄色の彼岸花
黄色の彼岸花として多く見られるのは「ショウキズイセン」と呼ばれるヒガンバナ科の花です。
淡い黄緑色の花びらが特徴的な「カチューシャ」や、花びらの黄色味が強い「喝采」という品種もあります。
その他、彼岸花と同じヒガンバナ属(リコリス属)で彼岸花に似ている花の中にピンクやオレンジなどがあります。
ちなみにアニメに登場して話題になった「青い彼岸花」はあるのでしょうか?残念ながら現実の世界では存在しないようです。
彼岸花の花言葉
彼岸花の花言葉は「悲しき思い出」「あきらめ」「独立」「情熱」。「悲しき思い出」は、墓地などでよく見られることに由来すると言われています。
それぞれの色の彼岸花の花言葉も紹介します。
「赤色の彼岸花」の花言葉
情熱・独立・再会・あきらめ・悲しい思い出・想うはあなた一人・また会う日を楽しみに
「情熱」は「赤」をイメージする言葉ですが、亡くなった人を偲び、別れを連想させる言葉が多いようです。
「白色の彼岸花」の花言葉
また会う日を楽しみに・想うはあなた一人
「想うはあなた一人」は、長い茎の上にだけ花が咲き、その花が落ちてから葉が出る様子から付けられたと言われ、「白」の純粋なイメージと重なる一途な想いを表しています。
「黄色の彼岸花」の花言葉
悲しい思い出・追想・深い思いやりの心・陽気・元気
他の色の花言葉と違って、明るく前向きな言葉があります。「黄色」という明るい色のイメージかもしれませんね。
彼岸花の球根には毒がある?
彼岸花には花・茎・葉・球根、すべての部分に毒があります。中でも特に強い毒を持つのは球根の部分です。
植物に含まれるのは主にアルカロイドという毒。その種類はとても多く、彼岸花には約20種類のアルカロイドが含まれています。
誤って食べてしまうと吐き気や下痢を起こし、重症の場合は中枢神経の麻痺を起こして死に至ることも。
彼岸花が土手や畦道に植えられているのは、モグラやネズミから稲や野菜などの農作物を守るためだと言われています。また墓地で多く見られるのも、モグラやネズミから埋葬された遺体を守るためだという言い伝えもあります。
現在では口にすることはありませんが、凶作が続く飢饉があった時代には彼岸花の球根を食べていたそうです。すりおろした球根を何回も水にさらして毒を抜いて飢えをしのいだとか。
触れる程度なら問題ないと言われていますが、口にするのは大変危険なので絶対にしないでくださいね。
彼岸花の見頃時期
彼岸花が咲く気温は、約20~25度とされています。まさに、秋の彼岸頃が適温というわけです。
もちろん地域によって気温が違うので咲く時期は多少異なりますが、毎年ほぼ同じ9月中旬~9月下旬頃にかけて開花して見頃を迎えます。
また、日差しが強い場所は開花が遅くなる傾向があり、半日影の涼しい場所では開花が早くなるようです。
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※この記事は2024年7月31日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。
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横手 奈保子
ゴールデンレトリバーとゆったりまったり暮らしています。「犬と一緒に泊まれる宿」にチャレンジ中。愛知県在住。