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2023.03.18

あの泉質は何に効くの?温泉の効果・効能を知って、大満足の温泉旅に出かけよう

様々な特徴のお湯を楽しめる温泉天国の日本。正しい入浴法を知っておけば、温泉効果も高まるはず。
知っているようで意外と知らない温泉の基礎知識を身につけて、次の温泉旅をより楽しいものにしませんか。

効能別のおすすめ温泉地はこちら!

※この記事は2022年11月18日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。

記事配信:じゃらんニュース

たとえ1回でも温泉入浴には確かな健康効果があります

温泉は特定の成分を含む熱エネルギーを持つ自然の温水です。温泉の効果の一つである温熱作用には血液循環を良くして筋肉の緊張をほぐし、痛みの神経を鈍感にする効果と、熱に対する刺激反応で免疫力や細胞修復力を上げる効果があります。

温熱作用だけなら、水道水の家庭のお風呂でも得られます。でも温泉はそこに含まれる成分の作用で、水道水よりすぐに温まる、保温効果が持続する、血管が拡張するといった優れた効果が実験で実証されています。この温泉の温熱作用については、1回の温泉入浴でも効果が得られます。

また、温泉の間接的効果の中に、温泉地を訪問するだけでリラックス感などを得られるという心理的効果があります。気圧変化などでホルモンバランスを整える転地療法には2~3週間の滞在が必要ですが、心理的リフレッシュなら1泊で十分。リラックスしたい、体を整えたいなどライフスタイルと目的に合わせて温泉を利用してください。

温泉の泉質と効能

温泉で体調を整えたいと考えるならぜひ知っておきたいのが泉質。10種の療養泉の泉質とそれぞれの特徴的な適応症を紹介します。泉質に加え、泉温、pHなどの属性を知って、次の温泉選びの参考に。

単純温泉

溶け込む成分が一定値に達していない湧出温度が25℃以上の温泉。pHが8.5以上ならアルカリ性単純温泉。体への負担が少なく、高齢者や子ども、肌がデリケートな人向き。

適応症
自律神経不安定症、不眠症、うつ状態

代表的温泉地
箱根湯本温泉(神奈川県/写真・湯遊び処 箱根の湯)、石和温泉(山梨県)、下呂温泉(岐阜県)など

単純温泉

塩化物泉

塩分を含む温泉で、海岸や火山の近くに湧くことが多い。水分が蒸発したあと皮膚に塩分が付着するため保温・保湿効果が高く、古来から「温まりの湯」と称されている。

適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症。飲用で萎縮性胃炎、便秘

代表的温泉地
秋保温泉(宮城県/写真・ホテル瑞鳳)、熱海温泉(静岡県)、城崎温泉(兵庫県)、指宿温泉(鹿児島県)など

塩化物泉

炭酸水素塩泉

皮膚の表面を柔らかくする作用があり、皮膚の脂肪などを乳化して石けんのように洗い流す。特にアルカリ性のものは湯上がりに肌がツルツルになるとされ「美肌の湯」と呼ばれる。

適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症。飲用で胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、糖尿病、痛風

代表的温泉地
龍神温泉(和歌山県/写真・季楽里 龍神)、鳴子温泉郷(宮城県)、平湯温泉(岐阜県)、嬉野温泉(佐賀県)など

炭酸水素塩泉

硫酸塩泉

保湿効果や血圧の降圧効果が高いとされ、古来より「傷の湯」、「中風の湯」と呼ばれる温泉地が多い。カルシウムを含むものは、保温効果が高く腰痛、肩こりにも効能があるとされる。

適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症。飲用で胆道系機能障害、高コレステロール血症、便秘

代表的温泉地
草津温泉(群馬県/写真・西の河原露天風呂)、蔦温泉(青森県)、山中温泉(石川県)、玉造温泉(島根県)など

硫酸塩泉

二酸化炭素泉

二酸化炭素(炭酸ガス)を含む温泉で、肌につく気泡が特徴。二酸化炭素には血管拡張効果があるため、血液の循環が良くなる。皮膚や筋肉の酸素が増加し、新陳代謝も促進。

適応症
きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症。飲用で胃腸機能低下

代表的温泉地
長湯温泉(大分県/写真・万象の湯)、泡の湯温泉(山形県)、大塩温泉(福島県)、小坂温泉郷(岐阜県)など

二酸化炭素泉

含鉄泉

湧出直後は透明だが、鉄分が酸化することで茶褐色に。よく温まることから更年期障害などの疾患に効能があるほか、飲用できる温泉地では鉄欠乏性貧血への期待も。

適応症
末梢循環障害、冷え性、関節リウマチ。飲用できる温泉地は鉄欠乏性貧血

代表的温泉地
有馬温泉(兵庫県/写真・有馬温泉 金泉)、黄金崎不老ふ死温泉(青森県)、長良川温泉(岐阜県)など

含鉄泉

酸性泉

pH3未満の温泉。体全体の調子を整える効果のほか、酸による殺菌効果で皮膚を清潔に保ち、アトピー性皮膚炎の改善が期待できる。刺激が強いため、皮膚の弱い人は注意。

適応症
アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、糖尿病、表皮化膿症

代表的温泉地
蔵王温泉(山形県/写真・上湯共同浴場)、酸ヶ湯温泉(青森県)、須川温泉(岩手県)、岳温泉(福島県)など

酸性泉

含よう素泉

活性度の高いヨウ素を含む温泉。ヨウ素はうがい薬や傷薬にも含まれているほど殺菌力が強い。飲用により体内に入ると甲状腺ホルモンが活発になり、代謝を促進するとされる。

適応症
温熱作用による肩こり、腰痛など。飲用で高コレステロール血症

代表的温泉地
白子温泉(千葉県/写真・浜紫)、新津温泉(新潟県)、信州高山温泉郷(長野県)、高屋温泉(宮崎県)など

含よう素泉

硫黄泉

温泉らしい硫黄臭が特徴。含まれる硫化水素ガスは末梢毛細血管を拡張させるため、動脈硬化症にも良いとされる。角質を柔らかくするので皮膚疾患にも効能があるが、刺激は強い。

適応症
アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症、糖尿病。飲用で高コレステロール血症

代表的温泉地
別府温泉(大分県/写真・別府温泉保養ランド)、登別温泉(北海道)、高湯温泉(福島県)、白骨温泉(長野県)など

硫黄泉

放射能泉

気体の放射性物質「ラドン」を含む。皮膚だけではなく呼吸器から吸入することができ、微量な放射能で免疫力がアップ。高尿酸血症(痛風)、関節リウマチにも効果が期待されている。

適応症
痛風、関節リウマチ、強直性脊椎炎など

代表的温泉地
鞆の浦温泉(広島県/写真・鞆の浦温泉 ホテル鷗風亭)、増富ラジウム温泉郷(山梨県)、三朝温泉(鳥取県)など

放射能泉

温泉の属性もチェック!

泉温

高温

温泉温度が42℃以上の湯船が「あつ湯」。交感神経が刺激され、体や心が興奮。意欲が湧いてくる。
代表的温泉地
峩々温泉(宮城県)、野沢温泉(長野県)、別府温泉(大分県)など

低温

湯船の温泉が35℃~39℃以下の「ぬる湯」は、負担が少なく、副交感神経を刺激しリラックスできる。
代表的温泉地
栃尾又温泉(新潟県)、下部温泉(山梨県)、祖谷温泉(徳島県)など

液性(pH)

酸性

pH3未満が酸性で、pH3~6未満が弱酸性。pH3未満の酸性泉は殺菌力が強く、肌を活性化してくれる。
代表的温泉地
玉川温泉(秋田県)、那須湯本温泉(栃木県)、塚原温泉(大分県)など

アルカリ性

pH8.5以上がアルカリ性、pH7.5~8.5未満が弱アルカリ性。つるり、ぬるりとした湯触りの美肌の湯。
代表的温泉地
繋温泉(岩手県)、白馬八方温泉(長野県)、奥津温泉(岡山県)など

浸透圧

低張性

溶存物質8g/kg以下の温泉で、人体の細胞液より濃度が低いため体に優しく、長湯しても湯あたりしにくい。
代表的温泉地
単純温泉、放射能泉などの泉質に多く、全国に多数

高張性

成分が濃く、皮膚から体に浸透しやすい温泉で、溶存物質10g/kg以上。湯あたりしやすいので注意。
代表的温泉地
高湯温泉(福島県)、松之山温泉(新潟県)、有馬温泉(兵庫)など

温泉Q&A~ 基礎知識編~

温泉の基本や、知っておきたい温泉の知識などを日本温泉科学会会長の前田眞治さんに教えていただきました。温泉好きはもちろん、温泉はどこも同じと思っていた人も、基本を身につけ、素朴な疑問を解消。より得する温泉旅に出かけましょう。

Q. そもそも温泉とその効果とは?

A. 25℃以上の温度がある地下水、または特定の成分を基準値以上含む地下水です。

そもそも温泉とその効果とは?

温泉とは地中から湧出する温水、鉱水、水蒸気、あるいはメタンガスなどを除くガス成分で、日本では「温泉法」により以下のどちらかの基準を満たすものを温泉としています。

(1)温泉源から採取されるときの温度が25℃以上
(2)硫黄、炭酸水素ナトリウムなど19種類の特定含有成分のうち、いずれか1つが定める基準値以上含んでいるもの

効果の期待できる療養泉は主成分の種類や量によって「単純温泉」「塩化物泉(食塩泉)」「炭酸水素温泉(重曹泉)」「硫酸塩泉」「二酸化炭素泉(炭酸泉)」「含鉄泉」「酸性泉」「含よう素泉」「硫黄泉」「放射能泉」の10種に大別されています。

温泉の効果は(1)温まることや浮力や抵抗などによる「物理作用」、(2)含有成分が吸収されることによる「化学的作用」、(3)いつもと違う環境に行くことによる「転地作用」があり、その3つによる複合作用が温泉での療法に利用されているのです。

Q. 美人の湯、美肌の湯って?

A. 弱アルカリ性の温泉やメタけい酸の豊富な温泉は、肌の調子を整えてくれます。

美人の湯、美肌の湯って?

温泉に入ると肌がツルツルすべすべになる泉質の温泉が、美人の湯、美肌の湯と称されることが多いです。一般に美肌・美人の湯とされるものはpHが7.5~8.5の弱アルカリ性のもので、適度に皮脂や古い角質を取り去ってくれます。

温泉の成分としては、化粧品のファンデーションなどの成分に含まれることもある「メタけい酸」に注目。皮膚細胞の増殖促進作用をもつ物質があり、化粧品会社の研究でも実証されているといいます。

Q. にごり湯は温泉が濃いの?

A. 含まれる成分が多いと白や茶色になりますが、透明でも成分豊富な温泉があります。

にごり湯は温泉が濃いの?

硫黄が多いと白い硫黄の結晶ができて乳白色に。鉄が多い温泉は、鉄が酸化されて茶褐色に。色が濃いのはその成分が多い証ですが、色が濃い温泉だけが成分が濃いわけではありません。

無色透明な温泉でも成分が豊富な温泉はたくさんあります。例えば、塩化物泉や炭酸水素塩泉などは無色透明が多いですが、塩分が多ければ肌が細かな塩の結晶で覆われ、保温効果が持続すると実証されています。

Q. 飲める温泉ってどんなもの?

A. 温泉は飲んでも効能があるとされています。ただし、飲める温泉かどうかはしっかり確認を。

 飲める温泉ってどんなもの?

温泉分析機関の検査に基づき、都道府県知事が飲泉を許可した温泉には入浴だけでなく飲むという利用方法があります。

例えば含鉄泉は貧血に、アルカリ性の温泉は胃炎、痛風に、硫酸塩泉は便秘や抗動脈硬化に適応しているとされます。飲泉は定期的に細菌検査などを実施している飲泉所で飲むこと。飲むときにはマイコップや使い捨ての紙コップなどを使い、3~5分かけてゆっくり飲むのがおすすめです。

Q. 自分に合った温泉の選び方って?

A. 美肌やリラックスなど、目的にあわせて泉質や温泉地の環境を選びましょう。

自分に合った温泉の選び方って?

同じ泉質であっても成分の種類や量は温泉源によって千差万別です。

例えば美肌を目指す(弱アルカリ性や炭酸水素塩泉など)や胃腸を整える(硫酸塩泉や炭酸水素塩泉など)といった自分の求める効能にあった泉質を知り(※「温泉の泉質と効能」「温泉の属性もチェック!」を参照)、リラックスなら海や山の景観が良く刺激の少ない温泉(単純温泉など)を選択。そこから自分の好みの温泉地や温泉宿を見つけましょう。

温泉Q&A~ 入浴・入浴マナー編~

せっかくの温泉効能も、入浴方法を間違うと効果が生かせなかったり、かえって体調を崩したりすることも。ここでは、意外と知られていない正しい温泉の入浴法や知っておきたいマナーを紹介します。

Q. 湯治は長期滞在しなくては意味がないでしょ?

A. 目的によりますが、リラックスなら1回の入浴でも効果があるとされています。

湯治は長期滞在しなくては意味がないでしょ?

肩こりや腰痛ならば、温泉の温熱効果や水圧のマッサージ効果などで1回の入浴でも改善が期待できます。弱アルカリ性の温泉で角質を落とす、メタけい酸を含む温泉で保湿するなどの場合も、1回で効果が感じられる場合が多いでしょう。

リラックスは心理的効果のため、1回でも数日でも本人次第ですが、一般的には数日で十分効果があります。ただし、血糖コントロールなどホルモンバランスを整える場合では、正常値に近くなるためには2~3週間かかる場合があります。自分がどうなりたいかの目的に応じて、滞在期間を決めるのがおすすめです。

Q. 入浴前に体を洗うのは常識ですよね?

A. はい。浴槽の温泉を清潔に保つために、必ずさっと洗いましょう。

入浴前に体を洗うのは常識ですよね?

早く湯船に浸かりたい気持ちはわかりますが、浴槽に入る前には体を洗うのがマナー。血圧の急変化を避けるため、温かい浴室で体を流しましょう。ただし、タオルなどでゴシゴシと強くこすってから入浴すると、刺激の強い酸性泉や硫黄泉などでは、皮膚が弱い人は荒れることがあるので適度にバリアを残した状態に。

ただし1人で入り1回で温泉を抜くタイプの貸切風呂などの浴槽なら、必ずしも洗う必要はありません。

Q. 湯上がりにはシャワーをするべき?

A. 泉質によって、流さない方がいい温泉もあります。

湯上がりにはシャワーをするべき?

湯上がりに水道水のシャワーを浴びると、せっかくの温泉成分を洗い流してしまうことになります。刺激の少ない単純温泉や、保温効果のある塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉などは水道水で洗い流さず、仕上げに湯口の新鮮な温泉を体にかける「あがり湯」がおすすめです。

殺菌効果のある酸性泉や硫酸塩泉、硫黄泉は、皮膚への刺激が強い場合があるため、入浴前に泉質を確認し、シャワーで洗い流す方がいいでしょう。

Q. せっかくだから、1日に何度も入浴した方がいいですよね

A. 何度も入るとかえって疲れることも。1日1~2回で十分。

せっかくだから、1日に何度も入浴した方がいいですよね

1日に何度も入浴すると、体が普段と違う温泉の環境に慣れようとするためかえって疲れ、湯あたりしてしまうことも。1日の入浴は多くても3回までがベター。1~2回でも十分温泉効果が得られます。

お湯の温度が選べるなら、夜はぬるめの湯に浸かり、朝は熱めのお湯にサッと入るのがおすすめ。ぬるい湯に浸かるとリラックス効果をもたらす副交感神経が刺激され安眠に。熱めの湯は交感神経を緊張させシャキッとできます。

Q. 長湯をしたら湯あたりしちゃうでしょ

A. 浸透圧の低い「低張性」の温泉は、湯あたりしにくいと言われています。

長湯をしたら湯あたりしちゃうでしょ

湯あたりとは、温泉に体が慣れようとする反応が追いつかず、疲れやめまい、吐き気のほか、下痢などの症状が起こることです。酸性泉や硫黄泉では、皮膚に発疹が出る場合も。

温泉分析表の「溶存物質」が1kgあたり10g以上で成分の濃い「高張性」の温泉は皮膚に温泉水が浸透しやすく、湯あたりしやすい湯です。単純温泉など8g以下の「低張性」の温泉は比較的湯あたりしにくいでしょう。入浴前にぜひ温泉分析表をチェックしましょう。

教えてくれたのは

日本温泉科学会 会長 前田眞治さん

国際医療福祉大学大学院リハビリテーション学分野教授。温泉療法専門医、リハビリテーション科などの専門医で、日本温泉科学会会長のほか日本温泉協会副会長・学術部委員長、人工炭酸泉研究会会長、日本温泉気候物理医学会理事を務める。主な著書に『温泉の最新健康学、新温泉医学』など。

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じゃらん編集部  じゃらん編集部

こんにちは、じゃらん編集部です。 旅のプロである私たちが「ど~しても教えたい旅行ネタ」を みなさんにお届けします。「あっ!」と驚く地元ネタから、 現地で動けるお役立ちネタまで、幅広く紹介しますよ。

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