宿番号:305475
『祈願の宿』 青島・地蔵庵のお知らせ・ブログ
●昔話・・・・日限のお地蔵さん2・・・・●
更新 : 2010/1/28 8:26
・・・日限のお地蔵さん@よりご覧ください
続き
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しかし、当時の交通手段は徒歩、二人の旅は思うように進みません。
息子は、何回も箱車から落ち、すり傷とあざだらけでした。おさきは、自分より大きくなった息子を抱え上げては、箱車に乗せそれを繰り返す。大変な旅。
そんな我を情けなく思う息子は、一軒のげた屋で店の主人に頼み、握りやすい丸太に歯をつけた、げたのようなものを作ってもらいました。少しでも自立したく、手にそれぞれ丸太のゲタを持ち不自由な足を箱車に入れたまま、這うようにして進んだのでした。
その姿は、まるで亀の様な姿。そんな息子をいっそう哀れに思いながらも、おさきは道行く人の視線なども気にもとめず、ひたすら先を急ぎした。
やっと大浜に着いた時おさきは、げっそりと痩せ四十前なのに髪はすっかり白くなっていました。
旅の壮絶さは、息子の手に持ったげたにまで現れておりました。
手元は血でまっ赤に染まりそれは、それは想像を絶する痛々しいものでした。
大浜の着くとおさきは、まずお地蔵さんへ向かいました。
父・母の言葉を「何かあれば、お地蔵さまお願いしなさい。」
この言葉を胸にお地蔵さんの御蔭いただきたく、帰郷した事の挨拶をするために、お地蔵様の前に向かいました。
手を合わせて祈るおさき。そんなときでございます。
不思議なことにいつしかお地蔵さんの微笑みから、涙が溢れておりました。
「お地蔵さま、お願いでございます。どうか、息子の足を直してくださいませ。一人で歩けますように、何卒お願いでございます。」
おさきは目を閉じ、一心不乱にお願いしました。
どのくらい立ったのでしょう。カタッという音。
おさきがふり向くと息子。
よろよろではあるが立ち上ったのでありました。
まるで誰かに手を引かれているように、両手を前に出し、一歩、二歩と足を進めています。
おさきは、息子の手を取ると声をあげました。
「おお、おまえ、歩けるのだね。」
「お母さん、わたしは歩けます。」
ふたりは、肩をだき合い、なみだを流して喜び合いました。
その後、日限地蔵さんは、願いごとをかなえてくださるお地蔵さまとして知られ、
多くの人が御参りにくるようになりました。