宿番号:311615
旅のエッセンス
更新 : 2010/11/24 16:52
旅を、お客さんと共有する...
と言えば、一寸格好つけすぎだが、
宿屋の仕事は、意外にこんなところかもしれない。
はるばる高東旅館を訪れる、その目的や滞在の和み具合を雰囲気で察知し、
余計なことと思われない程度のアドバイスをする。
これがなかなか難しいのだが、人によってはマイペースを貫くので構わないで欲しいというタイプや、帳場まで足を運び、最寄の観光情報を引き出そうとする積極型など様々である。
私としては、尋ねられた場合に適切な情報を提供しようとしているのだが、
中には、どうしてもこちらから押し付けてしまいたくなる場合もある。
相手にとってはいい迷惑かもしれないが、そうしたくなるタイプの人もいるのだ。
それは多分に、私の経験した旅のエッセンスと同じ香りを漂わす人に対してなのだろうと思う。
バイクが好きで、よく旅をした。
目的があるというのではないのだが、とにかく時間があればバイクに跨っていた。
今思えば、旅というより移動という感が強い。
今居る場所から、何処かに移動したくなる。
当時は、それが何によるものか考えてもみなかったが、
今思えば、移動することで何かを確かめたかったのだろうと思うのだ。
今居る場所に満足せず、何処かに行けば何かが見つかり、
今よりもっと素敵になれるかもしれないという、
根拠の無い、漠たる予感に導かれていたのかもしれない。
何が今より素敵になるのかということを、深く考えもせずにだ...
そんな中、確かな発見もあった。
確かな発見が自分どおりのものであれば嬉しく思い、
意に反したものにいらだちながら益々遠くに足を延ばしたりもしたが、
発見の連続が今の自分に至っているという思いは確かなものとして、在る。
こんなことに思い巡らす自分は、
きっと、お客さんと一緒に旅をしているのかもしれないと、
つくづく思うのだ.....