宿番号:311615
東五郎の湯 高東旅館のお知らせ・ブログ
風呂の雫と拳骨とトランペット.....
更新 : 2012/12/10 1:10
湯船に浸かって良い気持ちになっていると、
天井から冷たい雫が頭の上にポトリとひとつ..また、ひとつ。
目を瞑り雫の感覚を辿って行ったら、おやじの拳骨にたどり着いてしまった。
短気な父は、よく殴った。
悪いことをすればそれも仕方の無いことなのだが、
今思うと、子供のころ、訳もなく、のべつ幕なしに殴られいてたような気がする。
庭でみんなで遊んでいると、突然後頭部にガクンという衝撃。
振り返ると、おやじが長靴片手に立っている。
額には、青筋が。
みんなと一緒に遊んでいただけなのに何故という思いがして、
理不尽なゴム長靴の打撃に口をへの字に曲げて睨み返したら、またひつとゴツン。
雫の感触にそんな子供の頃の思い出が蘇り、思わず口元が緩む。
きっと何かがあったのだろうと思う。
仕事のことで考えることがあり、思い悩んでいたのかもしれない。
祖父との食い違いもあったのだろう。
溜まった不満のはけ口に、偶々近くに居た、殴るに適度な身長の、
子供の自分が居ただけかもしれない。
それにしても、よく殴られた。
兄弟みんな背が高いのに、小さいのは自分だけだ。
隔世遺伝で、息子も良い体格だ。
背が伸びなかったのは、おやじのせいだと思いながら、良い湯に浸る...
そんなおやじの趣味にオーディオがあった。
親戚の電気屋さんに特注で頼んだファイファイセットが届いた時の顔は忘れられない。
目尻が下がりっぱなしで、これがあのおやじかと子供心に思ったものだ。
海軍で軍楽隊の指揮官だっただけに、マーチやクラシックが大好きだったおやじ。
自分が中学の時にブラスバンド部が新設され、壱も弐にもなく申し込んだ。
訳もなく、ピカピカに光るトランペットが吹きたかったのだ。
そして、練習初日の日、みんなが指導者を教室で待ち構えていると、
なんと、おやじが神妙な、見たことも無いような顔をして入ってきたのだ。
指導者が、おやじ?????
すぐに、退部した。
振り返ってみれば、あのとき我慢していれば、また違った自分が居たのかもしれない。
でも、音楽好きとオーディオ好きは一緒なのであります...
ローランドハナの優しいタッチを聞きながら.....
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