宿番号:311615
東五郎の湯 高東旅館のお知らせ・ブログ
床屋の風景
更新 : 2012/12/19 23:06
椅子に座り、誰とでも交わすようなとりとめのない話から、
壁に飾った絵に対する踏み込んだ話題の展開に気持ちよくなっていると、
入り口のドアが開き、若い女性が立った。
床屋のおばさんは私から離れて、ドア付近で女性に向き合う。
静かに、感謝を込めた言葉を口にする見知らぬ女性。
その姿は少しやつれて、深い悲しみに覆われている。
見てはいけないものを感じ、鏡の端に映る女性から目を逸らした。
おばさんの、慰めの言葉が耳に届く。
いたわりを込めた、最小限の言葉で、女生に対峙している床屋のおばさん。
一気に、室内に非日常が舞い込んできたように思えた。
濃密な空間への転換。
つい先ほどまでの、どこにでもあるような床屋の風景は遠く押しやられ、
非日常が音もなくドアを開けて、
あなたは、なぁにと囁く...
いつかは答えなくてはならないと思いながら、
未だ、答えが見つからない。
日常のあいまいさが、邪魔しているのに違いないのだが...
あいまいさは、すぐに幕を下ろしたがる曲者だ.....