宿番号:311615
東五郎の湯 高東旅館のお知らせ・ブログ
私の、やくそく
更新 : 2016/10/28 8:27
約束の時間が過ぎているというのに、
目の前に広がる風景は、私の心配をよそに実に穏やかだ
そして、約束されたことは、何一つ起こらなかった
待っていても、何も起こらない
やはり、この世の習わしは、誰かが言ったとおりだった
裏付けの無い約束は、約束など初めから無かったに等しい、と
更に、時間が過ぎても変わる事無く、
穏やかさはますますその趣を濃くして、
私の前から逃げることなく居座り続けた
何一つ、約束したことなど起きないという顔をして
幾つもの夜が過ぎ、
風景は相も変わらず穏やかなままで、
私を此処に引き寄せた約束の、
その裏付けは穏やかな風景に溶け込みでもしたか、
いつしか私の前から気配を消した
でも、私は椅子に座って、約束通り待ち続けた
いつも通りの朝
けれども、その日に限って、今まで感じたことも無い風が頬を撫で、
木立から鳥たちが狂いでもしたか、大音立てて飛び立ち、
目の前に細い罅が幾千本も走ったかと思うと風景がぽろぽろと崩れ去り、
ぽっかり空いたその先に、
椅子に座る私が居た
約束は、今、為された
そして、、、私が消えた
20