宿番号:311615
白い紙は 風に吹かれて...
更新 : 2020/5/28 1:45
おじいちゃんと一緒に 山の畑に行ったとき
柔らかい風が吹いて 白いものが飛んできた
それを見たお爺ちゃんは 手にした鍬を放り投げて 白いものを追いかけた
何処まで行っただろう
私の視界から消えたおじいちゃんが姿を現すまで 随分と時間が経ったように思えた
傍に膝をついて 懐から白いものを取り出したおじいちゃん
そして言った
お前にあげる
大事なものをあげるから しっかり手にして生きるんだ
そう言って取り出した 白い紙
うっすらと眼に涙して 小さな私を抱きしめたとき 私の中に何かが入り込んだ
小さな私に 今まで感じたことの無い何かが 静かに優しく音もたてずに入ってきた
そして 今 思う
なんだったのだろう あれは
一枚の 白い紙
見たことも無い 真っ新な紙
その紙に 今 何を書こう
書くべき言葉は なんだろう.....