宿番号:311615
東五郎の湯 高東旅館のお知らせ・ブログ
キャリフォーニアの青い空
更新 : 2025/2/19 3:09
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今日という日の、最後のひと時
眠りにつく前の安らぎの時を、良い音楽空間に身を置きながら、
何も考えず、何も思わず、ただひたすらお気に入りのアーティストに耳を傾ける
深々とした革張りのソファーに身を沈めて、コニャックをなめながらパイプタバコを燻らせ、間接照明の淡い灯の下、今日一日を顧みながら...
なんていうと、如何にもという感じなのだが、実際はまるで違う
ソファーなんてものは無いし、最近胃の調子が悪くて酒も飲めないし、タバコも止めたいがこれだけはチョット減らして、照明は40ワットの裸電球一個、椅子は木製で硬い硬い...
冬の深夜というのに暖房もなく、目いっぱい厚着してただひたすら寒さに耐えながら、
何も思わずどころか、想念ともいえない雑多な思いが目まぐるしく駆け巡り、
目の前のぼんやりとした夜の雪景色から、何かが出て来るのではないかという密かな期待を寄せながら、今宵の肴は、カサンドラ.ウィルソン
投げやりな唄い方の中にも聞かせどころを心得てしっとりと泣かせるところもあり、何度聞いても飽きが来ない
そして、バックが良い
どんな人たちなのだろうと想像逞しくなる
また、録音の出来もピカイチ
スピーカーから飛び出す音そのものも、一音残らず楽しめる..美味しい魚の骨までしゃぶるように
圧巻は、ソウルスピリチュアルを通り越し、その原型ともいうべき遠くアフリカの大地へ誘うような曲作り
バックの演奏だけでも十分いける
彼女、唄わなくてもいいのにと思うこともしばしば
そんなことを感じながら、耳から入る音の世界で、頭の中に芽生えた言葉の種を少しずつ整えているのかもしれない
何も思わずなんて、嘘
無意識のうちに、雑とした思いを想念の高みまで押し上げる努力をしているに違いない
もやもやを抱えながらの苦しさを脱した時の晴れがましさを求めながら、
自分の知らないところで、自分の中の何かが、こつこつと休むことなく働いているのに違いない
外は、相変わらずの凍える闇
ふと、今、何かが暗闇を引き裂きながら東の空へと駆け抜けていったような.....