日本原風景がそう言えばうちの周りにはあるなあと思った。うちと道を挟み室町時代から続く四万部寺、朝になると巡礼者が歩き、窓から境内を見れば、江戸の頃日本橋の大店からに寄進の石積みの搭の周りに参拝者が屯している。ざわついた昼間を過ぎ、夕刻になると寺の人が鍾を突く。その音の波が村里に波紋する。電球色の元、いらしたゲストの人々の夕食が始まる。夜になると秋の虫の音が四十万(しじま)を包む。明けると傍の竹やぶから鳥の声。そして爽やかな空気とゲストが同時にダイニングに入室し朝食、郷土料理中心の肴で旅立つ旅人のご接待。また一日が始まる。江戸の頃と変わらぬ日常の繰り返し。