52ヘルツのクジラたち

町田その子さんの作品です。

2021年本屋大賞・受賞作。

52ヘルツのクジラとは‐他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさん仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。

自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い。新たな魂の物語が生まれる。

もうこれは重い・・心が締め付けられてしんどい・・だけど、どうなるか知りたいから読んでしまった。

血が繋がった家族だからって無償の愛は存在しない、分かってはいるけど実際にその描写を読むのは辛い。子どもをどうでもよく思う気持ちが理解できなくて・・でもニュースでも悲しい事件は多くて、今、実際にこんな状況のひとがきっといるんだろうなと。

児童虐待、トランスジェンダー、差別、DVなどテーマも現代的。

私、本屋大賞好きなんですよ。全国の書店員さんたちが売りたい本に投票されて選ばれるのがこちらの賞でして。直木賞とか芥川賞もいいんだけど、『全国の書店員さん』が推したい本！っていうお偉い先生ではなく、実際に本を売っている書店員さんが選ぶコンセプトがいいなと注目しております。

これは私にとっては多くの人に薦めたい作品ではなかったけど。自分がどれだけ幸せか、恵まれているか、愛情を受けているかを改めて感じることが出来ました。

『ひとというのは最初こそ貰う側やけんど、いずれは与える側にならないかん。いつまでも、貰ってばかりじゃいかんのよ。』

虐待している親のおばあさんが言った言葉。沁みます。

ラストは希望がもてるので、本当に良かった！！

周りの人達の愛や優しさを改めて実感したい方、考える読書をしたい方、余韻を残す読書をしたい方にオススメします。

★★☆☆☆