3棟の離れを持つ老舗宿。
江戸前期・1627年に金刀比羅宮の参道沿いに旅籠屋として創業。1905年(明治38年)に16代目当主により全室離れの料理旅館として、「琴平花壇」は開業された。美しい庭園に別荘のように離れが点在した当時の優雅な雰囲気を、3つの離れ屋が今も残す。現代の様式美にも通じる日本建築の繊細美と粋をゆったりと一夜過ごして感じたい。
▲明治時代後期の開業当時の延寿閣
▲宿には様々な記録が残る。写真は詩人・
与謝野晶子、寛(鉄幹)夫妻の直筆
昭和初期に多度津より移築された、離れ屋の中で最も大きく格式高いシンボル的存在の長生殿。もとは丸亀藩主の茶室と伝えられ、茶室建築を原点とする伝統的な数寄屋造の様式美を存分に堪能できる。客室は琴平花壇創設者・備前屋16代当主の三好源次郎の美術品コレクションで彩られ、建築美に加えアートにひたりながらの滞在が叶う贅沢さ。
▲圧倒的な存在感を放つ襖絵。江戸末期の作と言われている
(1)丸みのあるフォルムと現代にも通じる瀟洒なデザインが優しい光を灯す照明は、明治〜大正時代のものだそう
(2)何枚もの日本画で仕立てられた迫力ある金箔屏風。一枚一枚鑑賞するのもおもしろい
(3)ゆがみが趣ある波打ちガラスは明治期に手作りされたもの。窓越しに見る庭園の風景は、より一層時空を超えた情緒を感じさせる
(4)江戸前期の書家・堀江頼直による「寒山拾得」の三幅対の掛け軸
(5)玄関を上がると味のある飾り棚が出迎えてくれる。茶碗と柚子を描いた掛け軸は琴塚英一のもの
文豪・森鴎外が好んで滞在したといわれ、小説『金毘羅』でもこの部屋の様子がうかがえる。庭園の中腹に位置し2つの和室を持つ離れ屋は、粋な細工が随所に散りばめられつつ静謐な時間が過ぎてゆく、まさに命の洗濯ができそうな滞在空間。
▲庭園の石畳のアプローチを辿って離れ屋へ。玄関脇には年代を感じる石の水鉢が
▲欄間で飛翔するのは、その技法により大隈重信から「鴉博士」の称号を贈られた画家・長井一禾が描いた3羽の鴉
(1)筬欄間(おさらんま)や透かし彫りなど伝統的な様式美で構成された客室。浴室の豪奢な傘張り天井など贅を尽くした造り
(2)南画の掛け軸と季節を感じる生花でゆとりを与えてくれる床の間。日本建築の伝統の良さを改めて感じたい
(3)洒落っ気のある意匠が随所に。往時の人たちのデザインの粋を感じながら想いを馳せるのも贅沢なひととき
▲三和土(たたき)の玄関を上がると、ホテルの様な空間に驚く。そこは私だけの小さな別荘
3つの離れ屋のうち最も古い数寄屋造の建物。こぢんまりとした間取りながら、ベッドとソファ、テーブルセットを配して、レトロホテルの様な和モダンな空間に変身。日本建築の美を感じながら、遊び心たっぷりの和洋が融合した寛ぎを。
(1)和空間に馴染む天蓋付きのベッド。タイムスリップしたような優雅な気分
(2)陽光を反射するさざ波のごとき美しい網代の広縁にはテーブルセットが。四季折々の庭の眺めとともに
(3)檜風呂がある浴室の折り上げ格天井。四隅に施された透かし彫りに粋な遊び心を感じる
▲かの北原白秋も滞在したという泉亭。庭の泉水を眺めるような佇まいからその名が付いたそう
竹の香漂う
こんぴら温泉。
こんぴら参りのあとは、こんぴら温泉・吉祥の湯で癒しのひととき。竹林がライトアップされる夜の露天風呂は幻想的な雰囲気をお楽しみいただけます。
讃岐の幸を
心ゆくまで。
お楽しみの夕食は、讃岐の山里の恵みや瀬戸内の新鮮魚介を使った会席料理を。香川の美食ブランド「讃岐三畜」の、讃岐コーチン・讃岐夢豚・讃岐牛をはじめ讃岐の幸に舌鼓。