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2021.08.31

秋空(あきぞら)が高く見える理由とは?綺麗に見えるポイントや雲の種類をご紹介

秋空(あきぞら)というと、なにを想い浮かべますか?
雲、青、赤とんぼ…。俳句では秋の季語になっていて、高く晴れた空を表現した句が多くあります。
なぜ秋空といえば「高く晴れた空」なのでしょう?

この記事では、秋空が高く見える理由や、綺麗に見えるポイント、秋の雲の種類などを画像付きで解説します。

※この記事は2021年7月20日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、事前に各施設・店舗へ最新の情報をお問い合わせください。

記事配信:じゃらんニュース

秋空とは

(写真提供:写真AC)
(写真提供:写真AC)

「天高く馬肥ゆる秋」とよくいいますね。秋の空といえばさわやかで、澄んだ青のイメージ。

正確には10月中旬~11月いっぱいの天気がこのイメージにぴったり。大陸からの移動性高気圧に覆われる時期です。10月上旬までは秋雨前線が居座ることも多く、むしろぐずついた天気も。
秋の移動性高気圧は空気が乾燥していて、チリなども少ないので、青空が澄んで見えます。

冬至も近づいてきて、「秋の日はつるべ落とし」というほど昼の時間が短い季節。だからこそ余計に昼の青空が恋しく、きれいに見えるというのもありそうです。

秋空が高く見える理由

秋空が高く見える理由を挙げてみましょう。

1:空気の透明度が高いため
2:雲が高く浮かぶため
3:実際に空が高くなるため

これらが組み合わさることで、空の高さが強調されるように感じます。以下、1つずつ解説します。

1:空気の透明度が高い

(イラスト:じゃらん)
(イラスト:じゃらん)

10月中旬になると、これまで長雨を降らせていた秋雨前線がだんだんと南下していきます。そこに代わって入ってくるのが、西からの移動性高気圧。

乾燥した大陸生まれの移動性高気圧は、水分をあまり含んでいません。春にも同様に日本にやってくるのですが、そのときはエアロゾルを多く含んでいます。

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

エアロゾルとは、0.001~10マイクロメートルの固体や液体の粒子。黄砂や、化石燃料から生まれるスス、花粉などです。特に春の花粉の影響は大きく、澄んでいるように見えて花粉光環(写真)が出ることも。

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

秋の場合はそれらの不純物が少なく、太陽光が乱反射しにくくなり、青の波長がよく届きます。そのため、空が青く澄んで見えます。

2:雲が高く浮かぶ

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

秋の天気は、周期的に変わるため、さわやかな晴れとぐずついた天気が交互に訪れます。

天気が下り坂の前兆として、うろこ雲・いわし雲(巻層雲)、すじ雲(巻雲)など、高度の高いところにできる雲がしばしば見られるため、空も高く見えるようになります。

雲の種類は下で詳しく説明します!

3:実際に空が高くなる

(イラスト:じゃらん)
(イラスト:じゃらん)

空が高くなる?実はこれ、「対流圏」というものの話。雲の高さとも関係します。

地球は大気圏におおわれていますが、上から熱圏、中間圏、成層圏、対流圏の4つに分けることができます。雲ができるのはいちばん下の対流圏だけです。

この対流圏と成層圏の間のラインが、北半球では5~11月ごろは上に上がり(日本の上空では高度約12~16kmぐらいまで)、11月後半~4月は低く(同約9~10km)なります。

これは気温にダイレクトに関係していて、台風シーズンには一時的に変動することも。ざっと言うと、春と秋では1.5倍の高度差があります。

うろこ雲やすじ雲は秋に限らず年中発生していますが、秋は入道雲など他の雲が少ないぶん目立ちます。さらに雲の高度も上がることができるため、空が高く見えるようになります。

秋空の雲の種類

秋だけに見られる雲というわけではありませんが、秋空を代表する雲たちをご紹介します。

うろこ雲(いわし雲・さば雲)

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

いろんな名前で呼ばれますが、どれも同じ雲のこと。小さなかたまり状の雲が規則正しく並ぶことからの名前です。正しくは巻積雲(けんせきうん)といいます。

発生する高度はだいたい5000~13000mで、もっとも高いところにある雲(上層雲)のひとつ。上空はマイナス40℃以下で、雲を形作っている水滴は氷(氷晶)の状態です。

すじ雲

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

まるで繊維のように見える、細く薄く伸びた雲です。正しくは巻雲(けんうん)といいます。

糸のような形は、落下しながら風に流されているため。先端がカギ状に曲がっていると、天候は下り坂に向かうことが多いとされています。

よく晴れた日の上空に現れると、まさに秋空といった雰囲気。発生する高度は5000~13000mで、上層雲のひとつです。

ひつじ雲

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

小さなかたまり状の雲が集まって、まるで羊の群れのように見える雲です。正しくは高積雲(こうせきうん)といいます。

発生する高度は2000~7000mで、中ぐらいの高さにある雲(中層雲)のひとつ。季節に関係なく現れますが、春から秋にかけてよく見られます。

上のうろこ雲(巻積雲)と似ていますが、見分け方があります。

地上から見た見かけの幅が1~5度あり、手を伸ばした指1本からはみ出るほど大きければひつじ雲と考えて差し支えないでしょう。1度以下(指1本に隠れる程度)の小ささであれば、うろこ雲といえます。

綺麗な秋空が見えるポイント

さわやかな秋空は、タイミングが合えば誰でも出会うことができるもの。でもキレイに見えるコツというものもあります。具体例とともに見ていきましょう!

太陽を背負う

(写真提供:写真AC)
(写真提供:写真AC)

写真は青森県十和田市の蔦沼(つたぬま)。奥入瀬(おいらせ)渓流の北にあり、1周2.6kmの遊歩道を歩いて“蔦七沼”と呼ばれる沼のいくつかを巡ることができます。

秋の太陽は低いこともあって、逆光だとせっかくの青空も白く見えます。蔦沼は遊歩道から北西に向かって眺めるので、朝だとちょうどこんな順光になり、きれいな色が見られます。

上の写真はちょうど風もない快晴の朝。水面に映った空の青もきれいですね。

朝~午前中を狙う

(写真提供:写真AC)
(写真提供:写真AC)

写真は都内、明治神宮外苑のイチョウ並木。青山通りから聖徳(せいとく)記念絵画館に向かって約300m、4列のイチョウが並びます。東京の秋を代表する景観です。

上の空は、下の方ほど青が薄くなっています。いくつかの理由があるのですが、そのうちの1つが、地表近くには水蒸気、チリが多いため。太陽光が目に届くまでにそれらで乱反射して白っぽくなります。

都市部では時間が遅くなるほど水蒸気やチリが増えていくため、狙うならやっぱり朝。休日に出かけるのもおすすめです。神宮外苑のイチョウ並木は11月中旬~12月初旬が見ごろです。

高い山へ行く

(写真提供:(公社)とやま観光推進機構)
(写真提供:(公社)とやま観光推進機構)

写真は富山県・立山黒部アルペンルート内にある立山ロープウェイ。黒部平(くろべだいら)というところから、立山三山に向かって撮った写真です。立ち位置の標高は約1800m。

高い山は、低地と比べて水蒸気やチリなどがぐんと少ないため、空の青さが際立って見えます。ヒマラヤ登山レベルだと、頭上を見上げると“青黒い”のだとか。

ちなみに立山の紅葉の見ごろは、標高の高いところは9月下旬、ふもとでは10月下旬ごろ。立山黒部アルペンルートそのものは、毎年4月中旬~11月30日まで通ることができます。

秋空が引き立つものと一緒に見る

(写真提供:(公社)岡山県観光連盟)
(写真提供:(公社)岡山県観光連盟)

写真は岡山県真庭市(まにわし)の北房(ほくぼう)コスモス広場。岡山県は「晴れの国」と呼ばれるほど天気の日が多く、温暖でもあるため、秋晴れの季節に見ごろを迎える花畑がたくさんあります。

北房コスモス広場の見頃は10月中旬。中国道北房IC近くのコスモス畑と、備中川に沿って全長6kmものコスモス街道が見どころ。見学は無料です。

コスモスのピンクと空の青の対比が目に鮮やかですね。

また、人間の目には「補色調和」という性質があって、補色同士だとより鮮やかに見えます。青の補色は黄色~オレンジ色。紅葉の山と青空という組み合わせは、絶好の被写体です。

秋空が高く見える理由、いかがでしたか?空の色のひみつや雲の種類などに詳しくなると、くもりや雨の日だって空を見上げるのが楽しくなりますよ!

【記事監修】池田圭一
理系のフリーランス・ライター/エディター 。天文や宇宙、大気光学、気象、生物、化石鉱物などサイエンスに詳しく、IT分野の執筆も手掛ける。著書多数。
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【参考文献】
池田圭一『図説 空と雲の不思議 きれいな空・すごい雲を科学する』秀和システム、2017年
池田圭一・服部貴昭『水滴と氷晶がつくりだす空の虹色ハンドブック』文一総合出版、2013年

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ミキティ山田  ミキティ山田

旬な話題を求めて、いろいろな場所を取材・撮影する調査員。分厚い牛乳瓶メガネに隠したキュートな眼差しでネタをゲッチュー。得意技は自転車をかついで階段を登ること。ただしメガネのせいでよく転びます。