宿番号:302034
わらしの宿 生寿苑のお知らせ・ブログ
生寿苑に伝わる逸話「座敷わらし」(1)
更新 : 2015/10/10 11:11
生寿苑に伝わる逸話「座敷わらし」
あったこったか、なかったこったか。あったこったと思って聴かっさい。
-----------
昔、日がとっぷりと暮れて、もうあたりは薄暗くなって来た頃だったと。
峠に向かって若い夫婦もんが、猿ケ京にやって来た。
「明るいうちに峠を越えべぇと思ったけぇど、ここで薄暗くなっちまった。
軒下でもいいから泊めてもらうべぇと思って戸をたたいたけぇど、どの家も一見の旅のもんじゃ泊めてくれねぇや」
「どうするべぇ」
ちゅうで、途方にくれていたんだと。そうしたら、
村のはずれに明かしがぽつんとあるんで行くとお堂があったので、
「縁の下でもいいから泊めてもらうべぇ」
ちゅうで戸をたたいたら、優しげな婆さまが出て来て、
「それなら、この先にごうぎな家があるから、誰も住んでねぇだから行ってみらっさい」
ちゅうで、ちょうちんまで貸してくれたんだと。
「やれよかった、ありがとうがんす」
と、行ってみると、間口15間、奥行き5間のごうぎな家だ。
ところが中へ入ろうと思っても、ガタピシガタピシして戸が開かねえ。
ようやく開いたんで、ちょうちんを照らしてみたら、蜘蛛の巣だらけ、ほこりがつもってる。
けぇど囲炉裏はごうぎだし、炉ぶちもいい板げだ。大黒柱もふてぇもんだ。
「夜露をしのげるだけでも有難てぇ」
ちゅうで、疲れもあってそこで寝ちまった。
朝、起きたら雨がペチャペチャ降ってる。
「急ぐ旅じゃねえ、しばらく世話になるべぇ」
ちゅうで その周りを掃除をしたら、まるで長者さまの屋敷みとうにりっぱな家なんだと。
お堂の婆さまが来て
「夕べは、あっちゃなかったかい」
ちゅうんで、
「ああ、でっけぇ家でよく寝られた。空のあんばい悪りいんで、もうちょっと居てもいいかい」
と言ったら、びっくりして
「へぇ、この家に泊まったもんは、誰でも這いずり出て行っちまうのになぁ。そいじゃ、すきなだけ居ろ」ちゅんだと。
「有難てぇ」
ちゅんで 居たら、川の氾濫だちゅうで、村の男衆は、みな駆り出されて行くところだ。
猫の手も借りてぇちゅうで、婆さまに頼まれて、この旅の若い夫婦もんの父っあんも、村人の助っ人に出た。
そしたら働きっぷりがいいんで、夜も見張りしてくれちゅうで、帰って来ねぇ。
生寿苑に伝わる逸話「座敷わらし」(2)へ
関連する周辺観光情報