くぬぎの精といり豆のお話☆☆☆
更新 : 2019/10/16 4:14
昔、福岡の玉泉寺には、500歳にもなるくぬぎの樹がありました...
ある状持ちが門司の鹿喰峠付近でひと休みしていると、何だか生暖かい風が吹いてきました...
状持ちは背筋が寒くなり、辺りを見回しました...
すると、いきなり頭を何ものかに掴まれ、とっさに持っていた刀でその手を切り落としました...
振り返るとそこには大きな鬼の化け物がいて、昼飯替わりに状持ちを食おうとしたのでした...
しかし、鬼の腕からは手が再び生えてきて、状持ちを襲ってきました...
状持ちは、度胸を決め「待った」と声をかけました...
「食われる覚悟はできたが、頼みがある」と言うと、鬼は何でも言ってみろと言いました...
そこで、もっと大きく化けられるかと聞くと、鬼は見上げるほどの大きさになりました...
そして、今度はもっと小さくなれるかと聞くと、鬼は豆粒ほどの大きさになりました...
状持ちは、その鬼を手に乗せると、パクっと飲み込んでしまいました...
これで食われることはなくなったが、今度は鬼が腹の中で暴れてひどい腹痛にみまわれました...
そこで、知り合いの玉泉寺の和尚に助けを求めると、和尚は小僧に豆を煎らせて持ってきました...
そして、状持ちに向かって「鬼は外」と大声で叫んで、大量の煎り豆を食わせました...
それに押しつぶされたのか、鬼は静かになりました...
すると、急に状持ちの尻がむずがゆくなり、屁を出したくなりました...
和尚はかまわんから思いっきり屁を出しなさいと言うと、状持ちは大きな屁をこきました...
すると、屁が鬼の顔の形になり、天井を通り抜けて、寺の庭で鬼に戻りました...
そして、そのまま鬼は息絶えてしまいました...
この鬼はくぬぎの精で、通る旅人を長年悩ませていましたが、その業尽きて一生を終えました...
それ以来、寺では豆まきが恒例行事となり、豆を持っていく人が後を絶たなかったそうな...
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