あほうむすこの魚屋さんのお話☆☆☆
更新 : 2019/12/3 5:17
むかしむかしある町の長屋に、それはもう阿呆な息子が住んでおりました...
毎日仕事もせずぶらぶらしておりましたが、年頃になって嫁さんをもらいました...
それでも相変わらずぶらぶらしておりました...
嫁さんは、何か商いでもしたらどうかと男を説得し、なんとか魚屋に仕立て上げました...
人の大勢いる所へ行って「とりたての魚はいらんかねと言うて売るもんよ」と送り出しました...
男が魚を担いで歩いて行くと、葬式で人が大勢集まっている家に出くわしました...
男が「とりたての魚はいらんかね」と言うと、家の人達は怒って男を追い出しました...
男が家に帰ると、嫁さんは「そういう時はお悔やみの一つも言うもんよ」と教えてやりました...
次の日、男は祝言をあげている家に出くわしました...
男が「惜しい人を亡くしました」とお悔やみを言うと、家の人達は怒って男を追い出しました...
嫁さんは「そういう時は高砂の一つも歌うもんよ」と男に教えてやりました...
次の日、男は火事場に出くわしました...
男が「高砂や」と歌って魚を売ろうとすると、火消し達は怒って男を追い返しました...
嫁さんは「そういう時は水の一杯もかけて火を消してあげるもんよ」と男に教えてやりました...
次の日、男は鍛冶屋の前を通りかかりました...
男が炉の火に水をかけて魚を売ろうとすると、鍛冶屋は怒って男を追い出しました...
嫁さんは「そういう時は向う槌の一つも打ってあげるもんよ」と男に教えてやりました...
次の日、男は夫婦喧嘩に出くわしました...
男が夫の頭を槌でたたいて魚を売ろうとすると、女房は怒って男を追い出しました...
まあ、馬鹿な息子もいたもんです、阿呆息子はいつまでたっても魚屋ができんかったそうな...