見かえりの松のお話☆☆☆
更新 : 2020/1/30 4:48
昔、筑前の海辺の村々を行商して歩く、赤ん坊連れの女がおりました...
十年後、その赤ん坊はみなしごの娘となり、若松で子守奉公をしていました...
春になり、娘は春の陽気に誘われるように、花が満開の山へ入っていきました...
つつじの美しさに、娘は思わず背中の赤ん坊を、そっと草むらに降ろしました。
すると、まるで羽でも生えたかのような身の軽さを感じて、夢中に花の合間を飛び回りました...
ふと気が付くと、娘は今まで何をしていたのか、思い出せなくなっていました...
立ち尽くす娘の目の前に、大きな一本松が立っていました。
その松を見ているうちに、娘はハッと思い出しました...
「子守をしていたんだった」慌てて戻ると、野犬が赤ん坊に襲いかかろうとしていました...
娘は、飛びかかってくる野犬の鼻を噛みちぎって、どうにか追い払いました...
二度と背中から赤ん坊を降ろさないと誓い、子守を思い出させてくれた一本松に感謝しました...
その後、つつじの道を「子忘れの道」、一本松を「見返りの松」と呼ぶようになったそうな...