越後の兄弟のお話☆☆☆
更新 : 2020/2/11 2:57
むかしむかし、越後のある家に、道楽者の兄と真面目で働き者の弟がおりました...
ほとほと兄に手を焼いた父親は、親子の縁を切り、兄を家から追い出してしまいました...
それからしばらくして、父親は死んでしまい、残った貧乏な母と弟は暮らしが苦しくなりました...
仕方なく、親族に母親を預けて、弟は江戸の医者のところへ奉公に行きました...
せっせと働いた弟は、10年かかって、十五両もの大金を貯金する事ができました...
そこで、医者からお暇をもらって、故郷に残していた母親を引き取りに帰省することにしました...
人里離れた山道を急いでいると、山賊たちに襲われ、お金も着物も奪われてしまいました...
これでは帰省することも出来ず、弟はしばらくの間、山賊のところで下働きすることにしました...
働き者の弟を山賊たちは重宝しましたが、江戸で働きたいという弟に、護身用の刀を渡しました...
再び江戸にもどった弟が、もらった刀を売ると、三十両もの大金になりました...
そこで弟はもう一度、母の待つ故郷に向かって出発しました...
その途中、山賊の家に立ち寄り、差額の十五両を山賊の親方に返しました...
この律儀で正直な弟に、これまでの生い立ちを尋ねた山賊の親方は、ハッと気が付きました...
「弟よ、わしはお前の兄だ、幼い頃に家を追い出され、山賊になっていた」と涙を流しました...
親方は、これまで奪った宝物を全部手下たちに分け与え、弟と一緒に故郷へ出発しました...
親方と弟は、母を引き取り、田畑も買い戻して、親子三人でなかよく暮らしたそうな...