木仏長者のお話☆☆☆
更新 : 2020/3/10 6:07
昔々、ある村に、大きな屋敷に住む長者がおりました...
この長者、立派な屋敷に住んでいるのに加え、大層なお宝を持っておりました...
そのお宝とは、金で出来た、まばゆいばかりの仏様でありました...
この長者の屋敷には、風呂焚きの、五助という使用人がおりました...
五助は、信心深い男で、一体の木で出来た仏様を大事にしておりました...
五助は、食事を取る時も、まず木仏様に自分のお膳を供えてから、お下がりを頂いておりました...
ある年の正月、五助たち奉公人も無礼講で、長者と一緒に朝から祝いの宴席で騒いでおりました...
その席で、奉公人の一人が「そろそろ、年に一度の金仏様を拝ませてください」と言いました...
そこで、長者は立ち上がると、おもむろに後ろにある仏壇の扉を開けました...
そこにある金仏様は、ピカピカと光り輝き、いつ見ても見事なものでした...
すると、酒と踊りに飽きた長者は、突然こんな事を言い出しました...
「五助の木仏様と、ワシの金仏様とで相撲を取らせてみたいがどうだ、
木仏様が勝てば、長者の身代を全て五助に譲る、金仏様が勝てば、五助は一生ただ働きだ」
こうして、広間では、金仏様と木仏様が並べられ、相撲を取ることになりました...
するとどうだろう、何と二体の仏様はグラグラ動きだし、本当に相撲を取り始めたのでした...
木仏に味方する者と、金仏に味方する者とで、大変な騒ぎになりました...
勝負がなかなかつかず、大相撲になり、最後に、五助の木仏様が金仏様を押し倒しました...
長者は、皆の前で約束をしたので、金仏様を持って仕方なく屋敷を出て行きました...
五助は、長者になってからもますます信心深くなり、木仏長者と呼ばれるようになりました...
あの時、なぜ木仏様が勝てたのかを聞かれると、五助は信じる心が強かったからだと言いました...
木仏様は毎日信心を受けていたが、金仏様は磨かれるばかりで信心されなかったからだそうな...