だいりびなのお話☆☆☆
更新 : 2020/3/31 1:35
むかしむかし、安芸の国に、和泉屋という大きな店がありました...
この店には、歌にもうたわれたお菊という美しい娘がおりました...
その和泉屋には、先祖からつたわる立派なだいりびながありました...
ある時、売りに出す話がありましたが、お菊が泣いて残してくれと言い、取りやめになりました...
ある時、岩国の白銀屋から、お菊を息子の孫三郎の嫁にしたいと申し出があり、受け入れました...
お菊は父親に頼み、だいりびなを持って嫁入りをしました...
お菊が来てからというもの、白銀屋は今まで以上に賑わうようになりました...
ところが、元気だったお菊が、ふとしたことから病気になり、死んでしまいました...
悲しみにくれる孫三郎は、お菊の嫁入り道具を里に返すことにしました...
だいりびなをどうするかで迷いましたが、結局、残すことにしました...
しかし、孫三郎は、お菊が大事にしていただいりびなを見るたびに、悲しくなりました...
それで、生前、お菊を可愛がってくれた長谷屋のお婆さんに貰ってもらうことにしました...
長谷屋のお婆さんは、お菊に話しかけるように、ひな人形の相手をしました...
それから、長谷屋の店では、不思議なことが起こるようになりました...
主人の商が間違っていると、だいりびなが悲しそうな顔をし、正しいと明るい顔になりました...
こうして、長谷屋の店は繁盛しました...
そんな折、長谷屋のお婆さんは、だいりびなを持って孫三郎を訪ねました...
そして、これまでの不思議な話をしました...
「このだいりびなには、お菊さんがのり移っているんじゃよ」
「そうかお菊、悲しんでばかりいるわしが悪かった」
それからの孫三郎は、商に励み、だいりびなもその表情で孫三郎を助け、商売は大繁盛しました...
だいりびなは、いつまでも孫三郎の元で大事にされたそうな...