釜ヶ淵の鯉のお話☆☆☆
更新 : 2020/7/12 2:17
むかしむかし下野の国に、源じいという百姓がおりました...
源じいは三度の飯より網打ちが好きで、よく川に行っては一日中網打ちをしておりました...
ある夏の夕暮れ、切り立った崖に囲まれた釜ヶ淵にたどりつきました...
この淵の上には、その昔勝山の城があり、美しい姉妹の姫がおりました...
姉の紅葉姫と妹の雪姫は、敵に追いつめられ、この淵に身を投げたという言い伝えがありました...
源じいが網打ちをしていると、船の周りに鮮やかな緋鯉と雪のように真っ白な鯉が現れました...
源じいの網にかかった真っ白な鯉は、淵の底に引きずりこむような勢いで網を引っぱりました...
やっとの思いで真っ白な鯉を船に引きあげ、立派な鯉に大満足して家に向かって船を漕ぎました...
すると「雪姫、雪姫」と呼ぶ若い女の声が聞こえ、船はあっというまに転覆してしまいました...
船から逃げだした真っ白な鯉は、大きな緋鯉と寄りそうように淵の奥へと姿を消していきました...
翌朝、源じいが気がつくと、淵よりずっと下流の岸辺に投げだされていました...
源じいは夢でも見たのかと思いましたが、それっきり大好きだった網打ちをやめてしまいました...
今でも釜ヶ淵では、鮮やかな緋鯉と真っ白な鯉が寄り添って仲良く泳ぐのだそうな...