宿番号:308304
葉隠館のお知らせ・ブログ
葉隠入門No4
更新 : 2009/6/15 17:50
「着想と判断力を生みだす方」
生まれつきによりて、即座に知恵の出る人もあり、退いて枕をわりて案じ出す人もあり。このもとを極めて見るに、生まれつき高下はあれども、四誓願に押し当て、私なく案ずる時、不思議の知恵も出づるなり。皆人、物を深く案ずれば、遠き事も案じ出すように思えども、私を根にして暗示廻らし、皆邪智の働きにて、悪事となる事のみなり。愚人の習ひ、私なくなること成りがたし。さりながら、事に臨んで先づそのことを差し置き、胸に四誓願を押したて、私を除きて工夫いたさば、大はずれあるべからず。
(訳)生まれつきのせいで、即座に知恵の出る人もあれば、あとで枕を叩き割るほどに、考えあぐねた末、思案を示す人もいる。とにかく、その人その人、生まれつきの差違はあるものの、四つの誓願にもとづき、私=i私心、主観)を捨てて考えるとき、いままでに思いもよらなかったような知恵すらでてくるものである。
だれでも、ものごとをじっくりとよく考えさえすれば、どんな難解なことでも考え出せるように思うかもしれないが、私≠基本にして判断したのでは、いくら考えてもすべてが邪智の働きとなってしまい、役立たずになるばかりである。とは云うものの、おろかな人間どもには私≠なくすということはむずかしい。だから、事にのぞんだら、そのことを別にして、まず原則にしたがい。私≠除いて、いろいろ考えれば、大きくはずれる事はなくなるだろう。
【四誓願】
一、武士道に於いておくれ取り申すまじき事
一、主君の御用に立つべき事。
一、親に孝行仕るべき事。
一、大慈悲を起し人の為になるべき事。