宿番号:313188
大正浪漫の趣き 天見温泉 南天苑のお知らせ・ブログ
あいまいな... 日本の「庭」
更新 : 2007/11/19 20:02
「庭園ってどこ?」
...って、お客様に言われたことあるんですよね...(苦笑
客室の窓の外に広がる庭園を見てのことです。こう聞かれると、なかなか答えようがない...
南天苑の庭園は三千坪。金剛葛城山系の府庁山や、楠木正成が支城を構えたといわれる旗尾山などを借景にして、春は桜、秋は紅葉、冬は雪景色(ひと冬2回ぐらいでしょうか...?)。
そして、初夏には庭園西側に流れる天見川に自然の蛍が飛びます。一年中、四季の移り変わりが楽しめます。
「借景」とは、座敷から眺めれば、庭園からそれらの山々に繋がっているかのように造作されています。日本庭園って、ここまでが庭、ここからが山や川という境界の『領域』があいまいなのです。
ひところ、政治の世界で『あいまい戦術』なんてのが流行り(?)ましたが、政治で「あいまい」を使われると、投票する方は迷ってしまいますよねぇ...
話が脱線してしまいました。南天苑の庭に話を戻します...
■最近...
屈強なアルバイト約1名と、私の総員2名で、この庭の整備を行っています。
植木や、大きな石の移動は専門の方にお任せしますが、微細なところは、やはり店をすみずみまで知り尽くしている者が行わないと、どうも血が通わないような気がするのです。整備の良く出来ている箇所もありますし、手入れが追いついていない箇所もありますが、建物の周囲をぐるりと一周できる「回遊式庭園」をある程度まで、たった2名で仕上げようという試みです。
さて、そんな中で、この頃気づいたことなのですが、建物の「犬走り」と云われる縁下のコンクリ部分と庭との境界の部分。昔の家はここに自然石の「繰り石(くりいし)」を使っているんですね。これがまた「妙味」です。ようするに、ここもまた「ここまでが建物、ここからが庭」という『領域』をあいまいにしています。
西洋の宮殿や庭園は幾何学的で整然としていて、しばしば巨大なシンメトリーで人工的な庭園が作られます。これに対して日本の代表的な庭園を持つ「桂離宮」は、実際は長い年月とたいへんな人手と労力で、建造され維持されますが、見た目には豪華ではなく、ほとんど自然の地形と錯覚を覚えるほど人為的な自然の再現が試みられる...
「庭園ってどこに?」という言葉を戴くのは、ある程度失敗であり、ある程度成功であるのかも..
完成のない、現在進行形の「あいまい」なライフワークです。