宿番号:313188
大正浪漫の趣き 天見温泉 南天苑のお知らせ・ブログ
看々蝋月尽(みよみよろうげつにつく)
更新 : 2011/12/8 23:38
日本の茶道では、「掛物ほど第一の道具ハなし」と『南方録』にあるように、掛け軸は、茶席で最も重要とされ、“茶事や亭主の主題というべきもので、道具の取り合せの中心をなす”といいます。茶道では、先ず茶席に入れば第一に軸を拝見し、次いで香、花、釜の順に拝見します。
さて、日本旅館で“拝見”などという仰々しい作法はありませんが、宿側では常に季節に応じた掛け軸を床に飾ります。
今月、客室“鶴”の間に掛けられている軸は、茶掛けの禅語で、看々蝋月尽「看よ、看よ、蝋月に尽く(みよみよろうげつにつく)」と読みます。
蝋梅(ろうばい)の開花時期、すなわち旧暦12月を指して掛けられます。大意は、「ほら、ほら、もう12月になってしまったよ…」ということ。うかうかしているうちに年の瀬も迫ってきたと驚き、あたふたと今年やり残したことに奔走する…
あわせて、人の人生もまた然り、はっと気がつけば、蝋月と同じように、じきに幕がおりてしまう…どうぞご用心、ご用心…、と警醒の意を込めた一行です。
ともすれば、日常の煩わしさについつい流されしまいがちになる、志を立て崛起した頃の自分。節目節目には必ず自分の信念と、今の自分とを重ね合わせ、しばし閑座せよ、と云っているようにも思えます。
茶掛けの禅語はときに教条的ではありますが、その意を知れば、また人生の糧となり、まためぐり来る季節とともに味わい深いものです