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    受験生は、それでも恋をする。【後編・中】

    更新 : 2024/2/29 13:29

    入試初日を終え、ホテルへと戻る私たちの足取りは重かった。
    「難しすぎたね…私もう自信ないよ」
    「…また明日、切り替えよう。」
    そう。あまりにも大きすぎる絶望は悲壮感すら許さなかった。
    ホテルに着くとアパ社長カレーショップが淀んだ目に映る。しかし、毎晩食べていた850円のロースカツカレーは食べる気になれなかった。
    「今日は僕、コンビニで買う。先行ってて」
    彼女が黙った数秒間は、二人の空気の重苦しさを表すには十分すぎる時間だった。
    「うん、またね。」
    嘘のように弱々しい返事に、少しの驚きを覚えた私は咄嗟にこう切り返した。
    「名前、教えて欲しい。なんなら連絡先、教えて」
    彼女は目を丸くしながら、徐に携帯を取り出す。私は、新しく連絡先に追加された名前を噛みしめ思わず頬を緩める。
    「それじゃ、私はカレーショップの唐揚げでも買ってかーえろっ。しっかりとした肉質でジューシーなの、10個で850円が安くてオススメ、ふふ。」
    今日イチ饒舌だった彼女はまるで今さっき嬉しいことでもあったようだ。偶然にも私も良いことが起こったばかりだ。

    翌日以降、入試の出来不出来の波はあったが、落ち込みはしなかった。毎日彼女と切磋琢磨していた。彼女に励まされると何度でも立ち上がれる気がした。これが恋の力だ、3年前の自分から学びを得た。また、私の好物に850円の唐揚げ10個が追加された。これは自慢ではないが10個の唐揚げを彼女とシェアした仲だ。くっくっく。

    激動の入試生活10日間は刹那に過ぎ、彼女との別れは確実に訪れていた。
    入試最終日直前、いつもように彼女と大神宮へ足を運ぶ。この"いつも"にも終わりが来るんだという当たり前すら受け入れ難い程に、隣にいる彼女が好きなんだ。3年前から。
    「終わっちゃうね。早いなぁ。…今日のお賽銭は500円にしちゃおうかな。」
    「なら僕も。500円ずつ入れよう。」
    いつもより重く響く小銭の音。私たちは祈願した。

    帰り道、降り始めた雪は地面に触れた瞬間に水滴へと変わる。
    「明日、本格的な雪になると怖いね、電車とか。でも、さっきは曇りの予報だったよ」
    そんな彼女の発言は空虚なもので、彼女と過ごす最後の夜である寂しさが全てを無に帰する。
    まだ彼女と時間を共にしたい、受験が終わったら会えなくなるかもしれない、彼女のことが――
    「好きだ」
    思いを巡らせた末に私の口から出た言葉はこれだけだった。

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