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花のおもてなし 南楽のお知らせ・ブログ
走り湯
更新 : 2016/8/14 21:50
当館の貸切風呂のひとつに『 走り湯 』と名づけたところがあります。
そのもとになった昔話を書かせていただきます。
昔々、大賀茂と山をはさんだ蓮台寺の神様がお湯の取り合いをしていました。
大賀茂の神様は、のんきな神様でした。
小春日和のうららかな天気が続きのんびりと木陰で昼寝をしていました。
足元には大きな赤い壺に入ったお湯が置いてありました。
蓮台寺の神様は、かねがね大賀茂のお湯を欲しいと思っていましたので、
いつも隙をうかがっていました。
「しめた、のんきに昼寝をしているぞ。」
蓮台寺の神様は、白い雲の上から見下ろして喜びました。
そして、赤い壺ごとお湯を盗もうと降りてきました。
お湯のこぼれる音で目を覚ました大賀茂の神様は、
お湯が盗まれたのに気づいて、
「こら、待て!!お湯を返せ!!」
と大声を張り上げて蓮台寺の神様の後を追いかけました。
「お湯泥棒め!!それは大事な大賀茂の湯だぞ!!」
顔を真っ赤にして怒鳴りたててどんどん追いついてきます。
「せっかく盗んだお湯だ!!返すものか!!」
重い壺を抱えて、息を切らしながら逃げていきます。
そのうちに二人の神様はへとへとに疲れてきました。
「絶対渡さないぞ!!」
「誰がお前なんかに渡すものか!!」
お湯の取り合いが延々と続きました。
二人の神様の荒々しい声を聞きつけて、
大賀茂と蓮台寺両方から応援の為に大勢の神様が駆けつけてきました。
はじめは地元の大賀茂の神様が勝っていましたが、
蓮台寺の神様も後へは引けません。
「それ、がんばれ!!がんばれ!!」
「負けるな!!大賀茂のお湯がなくなるぞ!!」
激しい取り合いが続きました。
山の麓が紫色に変わる頃、とうとう大賀茂の神様は力尽きてしまいました。
「勝ったぞ!!お湯を取ったぞ!!」
意気揚々と勝どきを上げて蓮台寺の神様は帰っていきました。
こんなことがあってから、大賀茂にはお湯が出なくなってしまいました。
そして蓮台寺にはお湯がたくさん出ています。
お湯が走ったということで、
大賀茂には『走湯神社』と名づけられた神社が今も残っています。
写真は現在の『走湯神社』です。
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