宿番号:322820
藍めのうの輝き、古都松江の時を刻む
更新 : 2025/9/20 16:53
松江城の重厚な冠雪のように、時が重なりながら静かに佇む「めのうの店 川島」。
その佇まいは、まるで藍色に染まる夜空の一頁のように、訪れる者の心をそっと包みます。
創業は明治十年、以来140年余、
出雲めのう細工や勾玉を扱う老舗として
山陰の風土が育んだ美が静かに息づいています。
店の硝子窓越しには
太古から松江玉造がめのうの産地であったことを思わせる古墳や
遺跡の記憶が透けて見えるよう。
青めのう(碧玉、出雲石)を贅沢に用いた勾玉たちは
かつてほとんど採掘されなくなったその素材ゆえ
ひとつとして同じ表情を持つものはありません。
店内の一角に並ぶ勾玉は職人が引きわりから磨き上げまで十工程を重ね、
時には一品に一月を費やすこともある作品たち。
厚みやカーブ、膨らみの一つひとつが手の動きと時間を刻んでおり
その造形の奥底にはいにしえの神話や高貴さの気配が宿ります。
そして何より胸に響くのは
めのうを甦らせ形を与える職人の静かな祈り。
松江城を仰ぎ見るその場所で店の扉をくぐると過去と今が交錯し
時の流れが宝玉のように手に残る刹那を感じさせてくれます。
“美しき歴史の既視感”を求めて、
この店は旅人にとって特別な休息になることでしょう。
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