宿番号:327980
積善館(佳松亭積善・積善館山荘)のお知らせ・ブログ
擦り減った柱
更新 : 2011/6/27 19:57
積善館本館の縁側にある1本の柱は、
真ん中あたりがすり減っています。
これは、昔ここに馬をつないだからです。
馬をつないだ綱が長い年月をかけて柱の角を削ってしまったのです。
積善館本館が建てられたのが元禄4年(1691年)、
その後、人力車が普及し始める明治20年(1887年)代までの約200年間、
四万温泉への交通手段はもっぱら徒歩と馬でした。
諸国から馬でやって来た商人や旅人は、
積善館に着くと先ずこの柱に馬をつなぎ、腰を下ろして、
長旅で汚れた自分の足を「温泉」で洗ったのだそうです。
祖父の回顧録『思い出すままの記』の中にも、
大正の初め頃までの記憶として次のように記されています。
『春秋は渋川近在の農家の年寄りが孫を連れて入湯に馬に乗って来た。
炬燵櫓(こたつやぐら)を振り分けにさかさにいわい付けて、
おばあさんと孫と荷物を乗せ、手綱は若い者が取り、
おぢいさんはその後ろからトボトボ歩いて来た風景は、
懐かしい思い出である。
旅館には馬小屋があり、馬は一泊して帰りまた迎えに来た。』
耳を澄ますと、遠くで馬のいななきが聞こえたような気がします。