湯本に河童伝説がありました!
更新 : 2010/5/7 15:39
その昔、代掻きを終えた馬方が長孫川で馬を洗い、馬小屋へ入って、馬具をはずすために馬のわき腹の方へまわってみると、なんと、馬の尾の付け根のところに、河童がぶらさがっていた。
馬方が驚いて大声を上げると、馬もびっくりして後ろ足を蹴り上げた。その勢いで、河童は地面にたたきつけられてしまい、打ち所が悪かったのか、逃げる様子もなく、地面でもがいているのだった。男はもがいている河童に桶をかぶせ、河童は生け捕りとなった。
すぐに近所の人たちが駆けつけ、この河童をどうするかという話になった。「河童は悪いやつだから、殺してしまえ」という意見も出たが、「この川で河童が悪さをするのを聞いたことがない。可愛そうだから助けてやれ」となって、それに決まった。
桶をとってみると、なにやら桶に字が書いてある。河童は、自らの指をかみきり、血で次のように書いたのだった。
まだ人を殺めたことはありません。
それでも、夏に天王様に人間の生き胆を奉納しなければならないことがあります。その時は、夏の土用の頃、川岸に白い藤の花を咲かせます。その花を見た年は、注意するようにしてください。ですから、命だけは助けてください。必ず約束は守ります。
それではと名主が先頭になって、大橋の下流にあった淵に、河童を放してやった。
それから数年後の夏、大雨があった。百姓の大事な堰が崩壊してしまったので、名主が人足を招集した。
すると堰場の上に、白い藤の花が咲いている。「なんだ今頃」と人々は思ったが、すぐに、数年前の河童の言葉を思い起こした。「これは、今年は河童が悪さをするとの知らせだから、川に子供達を近寄らせられない」ということになった。おかげで、幸いにも川での禍がなくてすんだ。
その後、何年かあとの土用にもこの川辺に白い藤の花が咲いた。人々はそのたびに「また河童の藤が咲いた」と言って、川での水遊びを戒めていたのだという。
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