これは那須高原に伝わる、昔々のお話です。（前編より続き）


…鳥羽上皇はかねてからの

那須野領主須藤権守貞信の要請に応え、

討伐軍を編成しました。

三浦介義明、千葉介常胤、上総介広常を将軍に、

陰陽師・安部泰成を軍師に任命し、

8万余りの軍勢を那須野へと派遣したのです。


那須野で、既に白面金毛九尾の狐と化した

玉藻前を発見した討伐軍はすぐさま攻撃を仕掛けましたが、

九尾の狐の妖術などによって多くの戦力を失い、

最初の計画は失敗に終わりました。


三浦介と上総介をはじめとする将兵は

犬の尾を狐に見立てた犬追物で騎射を訓練し、

再び攻撃を開始しました。


今度は対策を十分に練ったため、

討伐軍は次第に九尾の狐を追い込んでいきました。

九尾の狐は貞信の夢に娘の姿で現れ許しを願いましたが、

貞信はこれを狐が弱っていると読み、

最後の攻勢に出たのです。


そして、三浦介が放った二つの矢が脇腹と首筋を貫き、

上総介の長刀が斬りつけたことで、

九尾の狐は息絶えました。


軍勢は白面金毛九尾の狐を捕らえて

殺すことには成功しましたが、

九尾の狐はその直後、

巨大な毒石（殺生石）に姿を変えてしまいました。


この毒石（殺生石）は

近づく人間やたくさんの動物等の命を奪い、

そのため村人は後に、

この毒石を『殺生石（せっしょうせき）』と名付けました。


この殺生石は鳥羽上皇の死後もずっと存在し、

周囲の村人たちを恐れさせていました。

鎮魂のためにやって来た多くの高僧ですら、

その毒気に次々と倒れたと言われています。


約200年の後（室町時代初期・1385年）、

会津・元現寺を開いた玄翁和尚（げんのうおしょう）によって、

殺生石は破壊され、破壊された殺生石は各地へと飛散したと

今に伝えられています。



…那須へ観光にお越しいただく皆様に、

少しでも歴史を感じていただけたら幸いです。


『史跡・殺生石（せっしょうせき）』へ

是非一度お出かけくださいませm(_ _)m