日本の総理は日本のアニメ文化を世界に発信するために百億かけてミュージアムを作ると言ったらしいが、その前にすることが有るだろうと思う。
日本のアニメや漫画が世界に冠たる文化なのは事実だが、サブ(亜流)の文化で、それをアピールする前に本流文化の発信をすべき。
戦前と戦後しばらくまで、経済的にはそれほど豊かではなかった日本は、その代り世界に冠たる文化立国をアピールすることができた。
この頃は日本の子どもも学校では教えられないが、じつは日本ほど面積三十七万(教科書的には北方領土込みで三十八万)平方キロの国土にびっしりと豊穣な文化遺産のある国はほかにない。戦争で米軍に焼き尽くされ、経済発展に伴う破壊と都市のスプロール化もあったにもかかわらずである。
奈良興福寺の宝物館にあるような彫刻はヨーロッパ以外では世界のどこにも無く、東大寺の大仏のような巨大な彫刻も京都三十三間堂の千一体の彫刻も世界のどこにも無い。四千年れきしを標ぼうする中国にも韓国にもない古建築の社寺が日本には腐るほどあり、それぞれが芸術的な庭を持ち、それぞれが優れた絵画美術と工芸を持っている。その日本に比べると伝統文化のほぼ何もないといってよい隣国韓国はそれでも漢方薬やら韓国料理やら民族音楽やら復元整備した古建築古遺跡や、ありとあらゆるものを引っ張り出しテーマパークにしてアジアをリードする伝統文化の国だと言っている。
豊穣な日本の文化遺産の中でも日本人自身が気付いていないすごいものは星の数ほどある伝統の祭りと山車と踊り。世界のどこでもこれほどこのようなものはなく、とくに極度に工業化された国の日本に残る理由は今は書かないが、このごろそろそろ危機に瀕しているかもしれない。日本の祭りと民俗行事を支えた地方の共同体が崩れ始めているから。
民俗行事だからこれもサブの文化ではあるが、もしその殿堂を作るなら少なくともアニメより世界発信の意味がある。全国にある京都祇園祭のような祭り山車から百ほど厳選し、再現し、展示するだけでアートになる。そもそもそれ自体、日本のアニメの源流なのだ。