彼は庄司直靖くん。
うちの水槽管理人だ。

見ての通り、とっても気が弱そうで、人の良さそうな男だが、人は見かけによらない。

いや、実は見かけによる、彼は虫を見れば腰を抜かすし、いい歳こいてお兄ちゃんに甘えっきりだ。

が、舐めてはいけない、彼の造った水槽管理システムは特許を取っている。
実は方々の大きな水族館でお呼びがかっているのに、忙しいからとそれを平気で断ったりする偉そうな奴だ。

彼のお客さんの中には、さかなクンが居たりする^^;

彼の特許は、正確には「無換水システム」という。
素人が説明するのは難しいが、本物の海の生物サイクルを、極力水槽内で再現してしまうものらしい。

花長園にあるのは、そのシステムの初号機だ。

1号機ではない、散々うちで実験を繰り返し、水槽を凍りつかせたり、水漏れでフロントを波打ち際みたいにしたりして得られた成果が、彼の特許なんで有る。

少しは感謝してくれと言いたいところだが、実は何も言えない(>_<)

うちが他にない新鮮な魚貝類をお客様に提供できるのは、このシステムがあるからこそなので・・・

彼は実は、先に紹介した八百屋さんの弟さんだ。

我々は庄司兄弟に頭が上がらない、どうしてくれる！？

要はつまり、料理というのは良質な食材と、板前の腕があればそれでいいというものではない。
海は荒れる、常に必要な時に、必要な魚が得られるとは限らない。

それを解決するのが、彼が造った人工の海だ。

何が言いたいのかというと、上辺だけに騙されてはいけない、世の中には、極めて地道だからこそ価値のある仕事があるのだ。