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親父のひとり言 「おいしい山形の昔話」
更新 : 2012/5/22 12:56
シベールといえば山形で一番大きなお菓子屋さんで、パンもおいしく、ラスクは全国的に有名である。
今の若い人は、シベールがどのくらいセンセーショナルな店だったのか知らないと思い、つい年寄りの知ったかぶりで教えたくなってしまう。
45年も前の話である。
先代の八文字屋の社長が、我が家へお茶のみに寄られた時のことであった。
茶の間の机に菓子折りをポンと置いて「お土産だ。これからは、こういう洋菓子を味わうんだよ。」と得意げに言っていたことを今でも覚えている。
こころ踊りながら箱を開けてみると、品のいい形をしたシュークリームが並んでいた。シュークリームはこの時代でも特別に珍しいものではなかったが、手にとって一口食べてみるとおいしさの驚きで、私の動きは一瞬止まってしまった。
当時のカスタードクリームは、やや固めにホイップしてあり、卵黄の味も強く、生クリームのソフトな舌触りなどはなかったものである。ところが、クリーミーでなめらかとろけるような舌触り、今までこんなシュークリームは食べたことがなかったのである。
包装をよく見ると、店の名前は「シベール」聞いたこともない店であった。
しばらくして、ロードトレーニングで小白川の山大通りを走っている時、入り口が引き戸の小さな店を見つけたそこがシベールであった。シュークリームのレベルの高さと店の外観の差が大きく再び驚いてしまった。
しかし、何か凄いものを持っている洋菓子店なんだと、高校生の私でさえ感じ取っていたものである。
東京で学生生活を終え、一年間だけ中華料理店で働かせてもらい、稼業の旅館に戻ってきた。東京では、神戸からドンクが進出してきて、フランスパンは人気の絶頂期にあった。そのころ、山形では本物のフランスパンを焼く店がなかった。おいしいフランスパンが食べたいと、日頃から思っていた時、知人からシベールのベーカリーで焼いているフランスパンのことを聞いた。
早速、買って食べてみると外側はパリパリ、中はもっちり芳醇な香り、まさにドンクに匹敵する味なのであった。
シュークリーム、その後のフランスパン。私にとってのシベールは、山形にこれまでなかった食べ物を運んでくるセンセーショナルな店であった。
いまや、ジャスダックに上場しているシベールであるが、創業者の熊谷さんは、小さい店を始めた時から今の姿を頭に描いていたのかもしれない。