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秋田温泉さとみのお知らせ・ブログ
恐怖の滑走「ズル」
更新 : 2010/10/28 12:33
今回は仁別森林鉄道で一番の恐怖「ズル」についてです。
森林鉄道の機関手にとっても、利用者にとっても、最大の恐怖は「ズル」と呼ばれる滑走だった。下り坂でレールが濡れていると、積荷の重みでブレーキが効かなくなる。予めブレーキ用の砂をまいていても効果は薄く、やがて暴走する。つまり車輪が回らなくても、軌動車はレールの上を滑走するわけで、それが長く続いて加速すれば、脱線−転覆の事態に。山を下る列車には貨車の列のところどころに四人の制動手が乗り、坂道にさしかかれば、機関手がレール上に砂をまくだけでなく、制動手もそれぞれブレーキ用の長い棒をレールと車輪との間に挟んで踏ん張る。それでも加速が限界(40キロ前後)を超えれば、手がつけられなくなり、機関手も制動手も脱線転覆の寸前、線路脇に飛び降りた。
明確な記録はないものの、脱線転覆事故はしばしばあり、崩れ落ちた丸太の下敷きになって死んだ人や、丸太の上から落ちて引きずられ、死に至った人などがいたことは確か。多くの証言がある。
こうした悲劇もあった仁別に昭和四十一年(1966)五月、県道が開通し、自動車が出入りするようになった。この日を待っていたかのように、森林鉄道も“全廃の急坂”を突っ走ることになる。ただ、見方を変えれば、上流地域は森林鉄道があったから道路開発が著しく遅れたとも言えよう。森林鉄道の功罪と評価は皆さんにお任せしたい。(秋田市旭川郷土史より)