宿番号:358809
星野リゾート 界 遠州のお知らせ・ブログ
伊豆のぐり茶
更新 : 2013/6/14 16:05
花乃井では、お部屋で「ぐり茶饅頭」をお召し上がりいただいております。
お客様に頻繁に「お土産用に」と問い合わせされるほど好評で(無くて申し訳ありません)、餡の甘さにぐり茶のふくよかさが組み合わさり、とても美味しい味になっているのだと思います。
このぐり茶というのは、お茶王国・静岡の中でも伊豆の伊東だけで生産されているものです。(静岡以外では九州で盛んに作られています)。釜の中でぐりぐりと炒るから「ぐり茶」。
お茶の歴史は、信じられないぐらい長く込み入った物です。私たちが普段飲んでいる煎茶製法は江戸の後期に京都で誕生したもの。抹茶の製法の進化形です。天下人・徳川家康でさえお抹茶は嗜んだことはあっても伸び煎茶は飲んだことはありませんでした。一方、江戸時代の庶民は茶道なんてしませんから抹茶は飲みません。それぞれ地方地方に異なったやりかたでお茶を作り飲んでいたそうです。ぐり茶の釜煎り製法はその古来のお茶製法に近い(のですが、微妙に違うようです)。
明治になり、お茶王国となった静岡人たちは大々的にお茶を輸出しはじめますのですが、米国人や欧州人たちに伸び煎茶は好まれても、ロシアではなぜか不人気でした。「彼らは中国製の烏龍茶を良く飲むからに違いない」と思った一部の人が中国茶によく似た釜煎り製法を導入し、今に至ったのが伊豆のぐり茶だということです。飲んでみると伸び煎茶とぐり茶は味わいが全然違いますから、ロシア人が好む味とはなんだったのかと、お茶を飲んで異国情緒を確かめるのも楽しいですね。
今でも伊豆に行くと、買えるお茶の大部分がぐり茶です。
ぐり茶の特長は「葉っぱが曲がって曲玉のようになったお茶」といわれますが、どういう意味か実際に見てみないとよく分かりません。「玉緑茶」という正式名称からもなかなかイメージがわきづらいですが、よくよく見てみますと、練られて丸くなった小さな塊がたくさん混じっています。ここまで小さく揉み固めるのにもたくさんの力がかかっているでしょうから、そこから豊かな味が生まれだしてくるのでしょう。
上品に長く針のように揉み透き通った黄金色を至上とする伸び煎茶に対し、ぐり茶は深い緑色のお茶が出てきます。色はまるで深蒸し煎茶のようですが、香りが違う。釜香と呼ばれる深い香りがあり、味も幅広く図太いです。お茶の味もいろいろあって、楽しいですね。
(利根川)