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KKRホテル金沢(国家公務員共済組合連合会金沢共済会館)のお知らせ・ブログ
篠田桃紅さんの「心」
更新 : 2015/12/27 6:03
一枚の大きな墨書が訪れる人々を歓迎するように、フロントの壁に掛けてあります。なんと書いてあるのでしょう?とよく訊かれます。漢字で心と書いてありますと説明していますが・・・、言われてみればそう見える、というような字なんです。作者はエッセイストとしても知られる今年102歳の篠田桃紅(しのだとうこう)さんです。
桃紅さんの作品はスーと引いた細い線、短冊のような太い線、そして不当辺矩形の組み合わせが特徴です。まるで抽象画のようですが、この造形を墨象(ぼくしょう)と呼んでいるようです。でも、はじめからそうだったわけではないみたいで、あるとき「川」の字は三本の線でなくても良いのではないかと思い、それからは普通に文字を書くのをやめたんだそうです。
当館はこの桃紅さんの作品を数点所蔵していて、玄関の壁画がそうであり、一階エレベーター横の壁などにも飾られています。これらの作品は16年前に建て替えたときに描いてもらったそうですから、85歳ころの作品ということになるんでしょうか。
このうち玄関とエレベーター横の作品は線と矩形の組合せで、いかにも桃紅さんです。特にエレベーター横のものは、艶消し黒の縦長の画面の上から銀の縦筋が枝分かれして下がり、下方には金の短冊形が斜めに昇っていて、それが一面金箔を貼った壁の中央に沈み込んでいるように見え、ほのかに優雅でちょっと豪華な感じです。
いっぽうフロントのものは、和紙に漢字として読めてしまう「心」を左に寄せて大きく書いています。これは書なんでしょうか、それとも墨象なんでしょうか?
桃紅さんが「心」を描くに至ったいきさつは知りませんが、あるいはKKRだから「心」(KoKoRo)と書いてほしいと頼まれたんでしょう、きっと。しかし桃紅さんは、文字は書きたくなかったのかもしれません。そこで墨の濃淡を変えて描いた四つの太い線を漢字の「心」の形に似せて配置したんじゃないでしょうか。
書なのか造形なのか、桃紅さんの「心」は今日も訪れる人々を無言で歓迎します。
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