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秋の恵みを味わう「次郎柿」
更新 : 2025/10/29 16:32
葛城北の丸からほど近い静岡県周智郡では、秋の深まりとともに、柿の木々が鮮やかな橙色の実をたわわに実らせています。 道すがら、ふと目に留まるその風景は、秋の訪れを静かに告げる自然からの便りのようです。
この地で育まれる「次郎柿」は、甘柿の中でもひときわ存在感を放つ品種です。 平たい四角形の形に、縦に走る浅い溝が4本あり、熟すと濃い橙色に染まり、種がほとんど入らないのも特徴です。 果実はずっしりと重く、ひとつ250〜300gほど。口に含めば、濃厚で上品な甘みが広がり、秋の恵みを存分に感じることができます。
この次郎柿、実は皇室にも献上される由緒ある果実。 明治天皇が静岡を訪れた際にその味を気に入り、以来、明治41年以降ほぼ毎年、皇室に届けられているといいます。 静岡の豊かな自然と人々の手間ひまが育てたこの柿は、まさに「品格ある秋の味覚」と呼ぶにふさわしい存在です。
柿は食べるだけではありません。木材は、タンスや工芸品などの素材として活用され、渋柿は漆器の下塗りや渋紙の補強材としても重宝されてきました。 さらに、奈良の名物「柿の葉寿司」に使われる柿の葉には、抗菌・抗酸化作用があるとされ、 すし飯の保存性を高める効果があることから、200年以上にわたり郷土料理として受け継がれてきた食文化でもあります。
葛城北の丸へ向かう道中で、赤く色づいた柿の木々が道沿いに現れると、秋の穏やかさと豊かさが、自然と風景の中に息づいているのを感じます。 次郎柿を味わいながら、季節の移ろいに心を寄せる贅沢な時間を、ぜひ静岡の秋とともにお楽しみください。