宿番号:390987
【若女将日記】若女将の仕事を支える小さな相棒たち
更新 : 2025/12/10 20:13
若女将でございます。
館内を歩き回り、着物の裾を整え、お客様のご到着をお迎えし、鹿たちの声にふと足を止める──。そんな一日の中で、実は私には“仕事の時だけそっと寄り添ってくれている小さな相棒たち”がいます。
今日はその中から、特に思い入れのある3つをご紹介させてください。
ひとつめは、べっ甲に小さなパールがあしらわれた簪。
私が女将と同じ着物を着はじめた頃、母である女将から「これをつけてみたら?」と手渡して貰ったものです。
簪の丸みのある光沢を見ると、当時の緊張や嬉しさがふっと蘇るようで、今でも「ここぞ」という時には必ず髪に挿します。
鏡の前で簪がすっと収まる瞬間、背筋が伸び、気持ちがすっと澄んでいく。私にとっては、気合いを入れるための大事な相棒です。
ふたつめは、辰のストラップ付きのボールペン。
姉と色違いでお揃いにしたもので、辰年に一緒にお仕事を始めた記念に選びました。
私の辰は働き者すぎたのか(笑)、あちこちのパーツが取れに取れて、今ではすっかり“ナマズ”のような姿に。それでも胸元に差したペンを見るたび、姉との「あの時」を思い出し、少しだけ心が柔らかくなるのです。
3つめは、のりこぼしの一刀彫りの根付けがついた栓抜き。
お水取りが個人的にとても好きな私に、女将がずいぶん前にくれたもので、手に馴染む大きさと、小さな根付けの木の質感がとても愛おしいのです。
これを帯に挟んでいると、いつでも女将の気配に守られているような、そんな安心感があります。
実は、ボールペンと栓抜きは、仕事中は常に身につけています。
胸元にボールペン、帯には栓抜き。
この二つが“ちゃんとそこにある”だけで、きゅっと身が引き締まるような、不思議な力をくれるのです。慌ただしい日でも「大丈夫、今日も丁寧に」とそっと語りかけてくれるようで、相棒という呼び方がぴったりです。
こうして並べてみると、どれも決して派手なものではありません。
けれど、毎日の仕事の中で少しだけ背中を押してくれたり、落ち着きを取り戻させてくれたりする、大切な存在。
これからも大事に、そして丁寧に使っていきたいと思います。
今日も私の小さな相棒たちとともに、心を込めて皆さまをお迎えできますように。
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