「高かったんやで。」
　クリスマスの朝、母はそう言い残し、不敵な笑みを浮かべながら、仕事に向かっていきました。

　高かった…。どういう意味だ？
この「ゴジラ」は私の一年間の尋常でない努力に対するサンタクロースのご褒美である。すなわち母の買ったものではない。サンタクロースの気持ちを代弁しているのか？しかし、母はなぜサンタクロースの気持ちを知っているのだ？
　
　まさか…母はサンタクロースと親しい仲にあるのか？そんな…。父に隠し事ができるような女ではない。全く表裏のない純粋で無垢な女だ。
　そんな疑心暗鬼に押しつぶされそうになりながらも、母を信じようとしていた時、ふとテレビを見ると、ある人物が私の目に飛び込んできました。

「さあ、本日のゲストは『不倫は文化』という言葉が、今年の流行語にノミネートされました石田純一さんでーす！」

　　全てが…繋がりました…。　
　衝撃の事実に恐れおののき、気を失いかけた私。薄れゆく意識の中で、最後に見えたのは、裸足革靴のピンクカーディガンの自信に満ち溢れた満面の笑みでありました…。

　あれからおよそ20年の月日が経ちました。今や純一も名監督の義理の息子に落ち着きました。
　今、改めて皆さまに私から謝罪の意を込めた重大なご報告がございます。
　
　1995年当時、私の母はサンタクロースと何らかの関係を持っていました。そもそも、貧乏だった我が家に、「電動怪獣王ゴジラ」あんな高級品が買えるとは到底考えられません。母は私のために、彼と何らかの契約を交わしていたようです。もちろんそこには、子供には言えない事があったのだと思います。これは誰にも平等な権利を侵害した許されざる行為です。でも、母は私を喜ばせたい一心で身を捧げたのです。私は母を心から愛しています。今までも、そしてこれからも。
　
　サンタクロースは実在します。今年もプレゼントを運びます。しかし決して求めすぎないで下さい。お子様を喜ばせようとする余り、常識を逸脱した行為に走る保護者の姿を私は観たくありません。

　お子様の努力に対するご褒美の使者、サンタクロース。いつかお会いしたら、ちゃんとお伝えしなくては、

　今でもゴジラが大好きです…と。