どーも、まさです。
大好評いただいている、「東京銭湯物語」。物語は佳境に向かいます。
銭湯を出た雄介の前で風を浴びる女性の真の目的とは？最後までお楽しみに。

時期もちょうど、中秋の名月。満月を観ながら風を浴び、同じフルーツオレを飲む女性。
風が体の火照りをゆっくりと冷ましていく。

「俺を、待っていたのか？まさか…」

雄介の頭を先程の妄想恋愛が一瞬で駆け巡った。この出会い方は、俺の妄想通りじゃないか！
話しかけるか、話しかけまいか、雄介に決断の時が迫る。
風が吹く度に香るシャンプーの香り。女性はシャンプーだけで男を悩殺する能力があるのだ。これは生物図鑑に載せるべきだ。ダーウィンの進化論の結末にも記して頂きたい。「女性はシャンプーによって進化する。」と。

「よっよし、話しかけるぞ…。」「あっ、あの…」

しかし、自身の言葉が聞こえるか聞こえないかのところで、女性は立ち上がり、歩き出してしまった。雄介、見事戦場に…散る。

「終わった…。いや…待てよ…」

これぞ奇跡。雄介は驚くほど冷静に状況を判断していた。最後の希望が残されていることに気づくのだ。そう、彼女が歩いて行った方向はアパホテルの方角と同じだったのだ。

「エンディングを迎えたかと思ったら、まだ首の皮一枚つながった。何の問題もなく後を付けられる」

訂正しよう。雄介は冷静ではなかった。今彼にそれがストーカーと同じ行為であることに気づくことはない。彼は、同じ方向に歩き始める。
彼女は、公園を抜け、左に曲がる。まだ同じ方向だ。次の十字路は右に。これも同じ方向だ。

「このまままっすぐ進み、大きな道に出れば、更に同じだ。こんな奇跡はあるのか。俺はついてる。迷わず進め。」

しかし、彼の想定を彼女は超えていく。大きな道に出る手前の十字路、その角にある居酒屋に、彼女は入って行ったのだ。

『魚奉行はしもと』。明るい看板に大きな文字で「魚」中の雰囲気は和みのある定食屋といった感じだ。

「何故、彼女がこの店に？」

迷いは無かった。というか吸い込まれるような感覚だ。雄介の足はゆっくりとその店に進んでいった。

―次回。店内で雄介を待っていた彼女の行動とは？

お楽しみに。

趣味で人生に潤いを。