『お主、泥棒かえ？なら、いくらでも持っていくがええ？』

―主から飛び出した思いがけない言葉。まさ六は大層驚きましたが、怯みを見せず、名乗りを上げます。

「おおよ。俺は天下の大泥棒、“神隠しのまさ六”たぁ俺のことでぃ！！」

『おぅおぅ、威勢がいいのぅ。元気なのはええこっちゃ。さあ、いくらでも持っていくがええ。』

「ばあさん、どうした？俺は泥棒だぞ？いいのか？」

『ええがな。ええがな。持って行け。どうせそのへんの泥棒は、ちょっと掴んで持っていくだけじゃろう？』

華子ばあさんの言葉に、まさ六は火が付いてしまいます。

「ばあさん。俺をなめたらどうなるか見せつけてやる！！」

宝の前に立ち、まさ六は声を上げます。

「行くぞぉぉぉ！！」

声をはずみに大きく風呂敷を広げると、目の前の宝を詰め込みます！

大きく膨らんだ風呂敷を抱え、運び出す！

詰め込む！運ぶ！詰め込む！運ぶ！

さすがは神隠しのまさ六、その盗みの速さは、まさに空をかける竜の如し。

『おぅ！こりゃすごいのぅ。自分で大泥棒言うだけの事はあるわい。そぉれ、頑張れ、頑張れ！』

「ばあさん！そんな悠長なこと言ってられるもの今の内だぞ！」

詰め込む！運ぶ！詰め込む！運ぶ！

まさ六の見事な盗みっぷりに、部屋の宝はみるみる内に、無くな……

ならない！！

部屋の中には予想だにせず数の宝が。

「くっそぅぅ！何で無くならないんだ！」

さすがは村一番の大金持ち、華子ばあさんの大屋敷。その宝の量は、まさに大海の如く！

詰め込む！運ぶ！詰め込む！運ぶ！

『どうした？まさ六？まだまだあるぞい！！』

「ふざけるな〜！！」

詰め込む！？運ぶ…！？

「ぬおおおおおお！！」

さすがのまさ六も、疲れが見え始め、最後の力を振り絞ります。

いつの間にやら、部屋の宝もスッカラカンに。

「どうだ！ばあさん！全部盗んでやったぞ！」

『すごいのぅ！まさ六！！こんな面白いのを見たのは、初めてじゃ！』

「ホントに笑ってられるのか？お前の財産スッカラカンだぞ！」

『いや、まさ六すまんのう。これと同じような部屋があと3つあるんじゃがのう？』

「……はあ！？」

―まさ六の想像を超えた、華子ばあさんの大屋敷。まさ六は宝を全部盗み切ることができるのか！！
そして、華子ばあさんの目的とはいかに！？


続く。