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読書の夏!?沖縄の魅力再発見
更新 : 2011/6/30 22:19
セミの声も聞こえだし夏本番を迎えた沖縄。
夏は沖縄でマリンスポーツにエステに海の見えるレストランで食事を・・・と??
ここに来てふと疑問が。沖縄の魅力はもっと別のところにもあったような。
そんな時、本棚で眠っていたある本の存在を思い出し読むことにしました。
今日はそんな本のご紹介。
ご存知の方もいらっしゃることでしょう。日本を代表する芸術家「岡本太郎」著
「忘れられた日本 <沖縄文化論>」 昭和36年に初版が発行され、近年も版が重ねられています。著者が返還前の1959年に訪れた沖縄で見た沖縄文化、日本の文化について彼ならではの鋭い感覚をもって語られてます。今から50年以上前の沖縄。冒頭に登場する那覇市内、国際通りや泊港の様子はすっかり変わっていますが、出会う人々や物から受ける印象は現在の沖縄でも通じるものがあります。
岡本太郎は沖縄文化の象徴のように思われる古い遺跡や王家の墓・遺品を見ても、壷屋の焼き物や紅型を見ても、技術や独自のよさを認めつつも「何かものたりない」と深い感動は表わしません。「ただ結構なものなんて、つまらない。もっと何でもなくて、凄いものがある」と沖縄本島を後にし、論じるに値する沖縄文化を探して荒波を乗り越え八重山へと向かいます。その後、島で人々の生活に密着した昔からの道具や強風から家を守るための珊瑚で出来た石垣などに出会い、その中に迫ってくる美しさや文化の本質を見出していくことになります。
著者が“何もない”ことを原点に最も感動する御嶽(うたき:神のおりる聖所)のくだりは詳細に書かれていますが、ここは本の要、是非ご一読頂きたいと思います。
途中の章では昔の八重山にむごい人頭税時代があった等、今日の平和な沖縄では触れることの少ない悲しい島の歴史なども伝わる島歌を通して詳細に語られます。
沖縄に一切媚びることなく、良いものはよい、つまらないものはつまらないとはっきり言う。この姿勢で書かれた本書では流行のガイドブックでは分からない、よそ行きでない本当の沖縄に触れられるような気がします。最近の「エンジョイ・リゾートアイランド・オキナワ」的な姿勢や旅では出会えない、もうひとつの沖縄の魅力を思い出すきっかけを得られるのではないでしょうか。
忘れかけていた沖縄文化の原点に触れたい時にお勧めの一冊です。
(写真 右:現在廃盤のオリジナル 左:近年発行の文庫版)