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2015.05.09

第8回 「いい香り」が良い思い出を作る!?香りから探す温泉旅

いい匂いが漂ってくると、ついフラフラと引き寄せられてしまうよね。
やきとりの匂いにつられて一杯酒ぐらいならいいけれども、湯の香となると、甘酸っぱい昔のできごとが思い出されてきたりする。ボクの愛唱歌にこんな歌詞がある。
「風の噂に一人来て 湯の香恋しい 奥飛騨路~♪」※(1)
温泉地には、湯の香と叶わぬ恋が付きものなのかなあ。

とまあ、匂いというのは後々まで印象に残り、記憶を呼び覚ます力がある。これは実験でも証明されていて、匂いは、古い脳である大脳辺縁系にまずは届くため、記憶や情動に関係しているとみられている。ボクも温泉の匂いをかぐと、切ない思い出がよみがえってくるんだよなあ…。

温泉おじさん

ところで温泉の匂いって色々とある。代表的なのが「硫黄の匂い」。草津温泉や蔵王温泉といった硫黄泉が湧く温泉地へ向かうと、途中からぷんっと香ってきて、もしかして誰かのおなら?と、つい辺りをキョロキョロしてしまったりしてね。「ゆで卵の匂い」なんて言われることも多いけれども、ゆで卵にもおならにも、「硫黄の匂い」の元である硫化水素が含まれているんだって。人の嗅覚ってたいしたものだよね。

このほか時々出会うのが、鉄がさびたような匂い。「金気臭」なんて表現をされ、どちらかと言えばクセがある。もっとクセが強いのがアンモニア臭ただよう温泉。これはめったにない刺激的な匂い。苦手な人も多いかなあ。温泉の匂いって今まであまり語られてこなかったけれども、その湯その湯で個性がある。今までボクが出会った温泉の匂いにはどんな種類があるのか一覧を紹介。

温泉 臭い

不思議なことに、地元の人に、「この温泉、いい匂いがしますね」なんて話しかけても、「アレ、そう?」なんて気がつかない人が結構いるんだよね。地元の人にとってはいつもの匂い。慣れてしまっているんだね。温泉ってその土地に含まれている匂いを溶かし込んで湧き出している。匂いが好きな温泉って、何度でも行きたくなる。脳の奥にある快感スイッチが刺激されるんだなあ。

温泉おじさん

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匂いは、視覚や聴覚といったほかの五感とは異なり、直接、古い脳に入ってきて、感情や記憶に影響を与える。つまりは、湯の香と共にいい思い出を作れば、長く記憶の中に「いい温泉」として残っていく。香りと記憶はあざなえる縄の如し。大切な人に温泉旅を覚えておいてもらいたいなら、「香りのある温泉」も良さそうだ。

参考資料
※(1)『奥飛騨慕情』(歌手・作詞・作曲:竜鉄也)
極楽湯HP「温泉あらかると」第30回温泉の匂い 古田靖志著
※外池光雄 香り選書17『匂いとヒトの脳』(フレグランスジャーナル社)
※楢崎正也 『におい 基礎知識と不快対策・香りの活用』(オーム社)
※青島均 『香りの科学はどこまで解明されたか』(フレグランスジャーナル社)

温泉おじさん 本名:温泉湯太郎  温泉おじさん 本名:温泉湯太郎

華の60代。第2の人生を輝かせるべく温泉道にまい進中。 「湯太郎さぁん、一緒に温泉行きましょうよ」なんて、妙齢なご婦人方からのお誘いに応えられるよう必死に温泉について勉強中。熟年の星めざして湯あたりしない程度にがんばっぺー。

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