江戸時代から日本三大珍味と言われているのが、「このわた」、「からすみ」、「ウニ」。珍味の名のとおり珍しい食材なので、まだ食べたことがないという方も多いかもしれません。
それぞれの特徴やおすすめの食べ方をはじめ、日本にたくさんあるさまざまな珍味や、世界三大珍味もご紹介します!
日本三大珍味とは?
江戸時代から続く日本の珍味
世界三大珍味は聞いたことがあっても、日本三大珍味は知らないという方も多いのではないでしょうか。そもそも珍味とは、その名のごとく、それぞれの地域ならではの珍しい食材や、普段はなかなか味わえない貴重な食材などのことを指します。
日本三大珍味は諸説ありますが、江戸時代から言われていたのが、三河(愛知県)の「このわた」、長崎の「からすみ」、越前の「ウニ」。どれも希少な食材であることから、江戸将軍家や京都御所への献上品としても重宝されてきました。
「食材を余すところなく大切にしたい」「保存食にして長く美味しく味わいたい」、そんな先人たちの想いや知恵がつまったものが珍味と言えるのではないでしょうか。
このわた

このわたとは?
このわたとは、ナマコのはらわた(内臓)の塩辛のこと。「こ」はナマコの古い呼び名で、その腸=「わた」であることから、この呼び名になったと言われています。一匹のナマコからとれる腸は1本だけですから、とても貴重な食材であることがわかるのではないでしょうか。
古くから三河・尾張(愛知県)や能登(石川県)が名産として知られていますが、最近では瀬戸内海でもよく作られています。
おすすめの食べ方
イカの塩辛に似ていて、それほどクセが強いわけではないので、塩辛が食べられる方なら問題ないはず。イカより少しコリコリした食感が特徴です。
小皿に入れて酒の肴としてつまんだり、温かいご飯に乗せておかずにするのが、よくある食べ方。少し塩辛い場合は、うずらの卵を加えて味をやわらげるのもあり。
他にもイカや甘海老と一緒にあえたり、熱燗にいれて楽しむ「このわた酒」や、包丁で軽く叩いてからお椀に入れて薄味の汁を注ぐ「このわた汁」もおすすめです。
からすみ

からすみとは?
魚のボラの卵巣を塩漬けにし、天日干しで乾燥させたもの。その形が唐(中国)の墨に似ていたことから、唐墨=からすみと呼ばれるようになったのが名前の由来のようです。
古くはギリシャやエジプトで製造され、日本には安土桃山時代に中国から長崎に渡ってきたと言われています。現在は台湾やイタリアのお土産としても有名。国産からすみの産地では長崎が知られています。
おすすめの食べ方
他の珍味に比べるとそれほどクセがなく、始めての方でも食べやすい味。中にはカラスミのことを「チーズとウニを混ぜたような味」と表現する方もいますが、例えるなら塩分の効いた濃厚なチーズのような味わいです。
上の写真のように、スライスしてそのまま食べたり、大根などの野菜と一緒に食べるだけで、美味しい酒の肴に。軽く炙るとさらに香ばしさが増します。イタリアでは、すりおろしてパスタにあえて食べる、シンプルなからすみパスタが一般的。
それほどクセも強くないので、サラダに入れたり、チャーハンにしたり、お茶漬けに入れたりと、さまざまなレシピが楽しめる食材です。
ウニ

ウニとは?
珍味のウニは、生のウニではなく、ウニの精巣や卵巣に塩を加えた「塩ウニ」のことを指します。
福井県一帯で作られる越前雲丹が古くからよく知られていましたが、現在では、北海道から九州までさまざまな地域で作られており、それぞれウニの種類や産地、加工方法などが異なることから、味比べをしてみるのも楽しいかもしれません。
おすすめの食べ方
塩ウニと聞くと塩辛いウニの味を想像する方もいるかもしれませんが、塩を加えることで余計な水分や臭みが取れるため、より濃厚なウニの味が楽しめるのが特徴。
そのまま酒の肴として、ご飯に乗せて、濃縮されたウニのコクと甘みをじっくりと味わうのが定番の食べ方です。酒どころとしても有名な越前で愛されてきた食材だけあって、日本酒との相性はバッチリ!
また、程よい塩味がついているので、卵焼きやおにぎりに入れたり、生クリームとあえてウニのスパゲティにしたり、さまざまなアレンジが効くのも特徴です。
その他、おすすめの日本の珍味
うるか

鮎(あゆ)の内臓の塩辛のこと。川にある苔を好んで食べる鮎は、その独特な香りから「香魚(こうぎょ)」とも呼ばれ、夏の味覚として愛されています。酒の肴としてもちろん、アンチョビにも似た風味のためイタリア料理の食材としても使う方も。
鮎の名産地は、岐阜県や熊本県、島根県など特に西日本に多く、西日本ではウニの代わりに、うるかを日本三大珍味にあげる地域もあります。
くちこ

くちことは、ナマコの卵巣のこと。産卵を迎える時期に肥大した卵巣を取り出して、塩辛にしたものが「生くちこ」、塩を加えて乾燥させたものが「干しくちこ」です。同じくナマコから作られる「このわた」よりも貴重な食材で、能登の高級珍味として知られています。
「生くちこ」はイカの塩辛やこのわたにも似ていますが、「干しくちこ」は全く別物で、干すことで旨味が凝縮されるので、どちらかといえば香り豊かなスルメイカに近い感じです。
海水だけで作られるので、それほど塩分は強くなく、最初口に入れると少し淡白に感じられるものの、噛むたびに繊細で深い味わいが口の中に広がっていきます。生くちこはそのまま、干しくちこは軽く炙って、酒の肴としてじっくり味わってみてください。
くさや

伊豆諸島の特産品として知られるくさやは、新鮮なムロアジやトビウオ、シイラ、サンマなどの魚を「くさや液」につけてから天日干しにした干物の一つです。
「くさや液」とは、魚をつける塩水のことで、長年塩を足しながら繰り返し使用することで発酵が進み、魚醤に近い風味が生まれます。中には200年・300年と使用されている「くさや液」もあるとか。
味は干物に近いものの、より魚の凝縮された旨みと強めの塩味が効いた濃厚な味わい。強烈で独特な匂いから断念してしまいがちですが、一度食べてみるとその旨さに病みつきになってしまう人も多いようです。
くさやが生まれた伊豆諸島産の「島焼酎」や日本酒など、度数の高いお酒との相性もバッチリ。栄養も満点なので、ぜひ匂いに負けずチャレンジしていただきたい珍味です。
鮒寿司

鮒寿司とは、琵琶湖でとれるニゴロブナを塩漬けにした後、炊いたごはんにつけて発酵させたもの。
その歴史は奈良時代にまでさかのぼり、近江国(滋賀県)で古くから親しまれていた郷土料理です。栄養価が高い発酵食品で、風邪や腹痛になった時の健康食として、また、正月などのハレの日にも欠かせない料理だったとか。
こちらも独特の香りで有名ですが、特に中の卵の部分は濃厚なチーズのような風味が特徴。食べ方は鮒の身をスライスしてそのまま食べたり、お茶漬けや雑炊にするのもおすすめ。
黒作り

富山県の郷土料理で、イカ墨を混ぜたイカの塩辛のこと。イカ墨を入れることによって深いコクが生まれるだけでなく、塩辛の独特の臭みを和らげる効果もあるそうで、塩辛は苦手という方にも試していただきたい珍味です。
酒の肴やおかずとして楽しむほか、なかなか自宅では作りにくいイカ墨のパスタやリゾットにしてみるのもあり。イカ墨はイタリアやスペインでも使われる食材なので、よく合いますよ。
世界三大珍味
世界にも三大珍味と言われる食材があります。その由来は不明ですが、なかなか食べる機会のない高級食材として挙げられる3つの珍味を紹介します。
フォアグラ

ガチョウやアヒルにたくさんの餌を与えることにより、肝臓を肥大させて作られるのがフォアグラ。主にフランスで生産・消費される伝統料理で、クリスマスやお祝いごとのご馳走として食べられています。
キャビア

キャビアは、チョウザメの卵を塩漬けにしたもの。主な産地としてカスピ海が有名ですが、最近では日本でも養殖を進めてきたことから、新鮮な国産キャビアも販売されています。そのまま食べるのはもちろん、バケットやクラッカー、チーズ、茹で卵、カルパッチョ、パスタなどとの相性も抜群。
トリュフ

日本名「西洋松露(セイヨウショウロ)」というキノコのこと。主にイタリアやフランスの山林に自生し、土の中に埋まっているため、訓練された犬や豚を使って探すのが一般的。希少価値の高さから、「黒いダイヤ」と呼ばれています。
最大の魅力とも言われるのが特有の香りで、生のままスライスして料理にかけるなど、香り付けとして使われることの多い食材です。最近ではトリュフの香りを手軽に取り入れられる、トリュフ塩やトリュフオイルなども売られています。
※この記事は2024年1月21日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。
※掲載されている情報や写真については最新の情報とは限りません。必ずご自身で事前にご確認の上、ご利用ください。
※掲載の価格は全て税込価格です。
Akiko
美味しいものを求めて、国内外を旅するライター。最近は山登りも始めるも、何よりの楽しみは下山後のビールと温泉。