茶道をお稽古してみたい。でも作法も道具もよく知らないし…。
そんな人のために、これだけ知っておけばなんとかなる、茶道の基本をお伝えします。
●茶の湯の歴史 ●表千家、裏千家などの流派 ●お点前のための道具 ●体験教室の基本的な流れまで、5分で分かる茶道のダイジェストです。
※この記事は2020年10月1日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、事前に各施設・店舗へ最新の情報をお問い合わせください。
茶道とは?

茶道とは、一言で言ってしまうと、
静かに抹茶を点てて味わうことを通して、自然と調和し、人と物を敬う態度を学ぶことです。
茶の湯は禅宗のお寺で、座禅の習慣とともに始まりました。
室町~戦国時代には、日本的な美や、高い精神性を求める「わび茶」がほぼ完成します。
茶道は「禅」と深く結びついています。これを、茶禅一味(ちゃぜんいちみ)といいます。
実際のお稽古では、陶芸、挿花、建築、絵画、飲食、社交などを総合的に学ぶことになるので、一般教養としても役に立つ側面を持っています。
1分でおさえる茶道の歴史
茶道の歴史と、「世界的な立ち位置」をおさえておきましょう。
わび茶を完成させたのは、時代順に以下の3人の系譜です。
村田珠光(むらたじゅこう、珠光:しゅこうだけの場合も)
武野紹鴎(たけのじょうおう)
千利休(せんのりきゅう)
この3人によって、精神性(珠光)、美術性(紹鴎)、わびの世界観(利休)が確立しました。
この3人は、どの流派にとっても大事な「茶祖」です。
その後たくさんの流派が生まれますが、すべて千利休から枝分かれしています。

ぐっと時代は下がって、今では「わび」や「禅」の思想は、欧米では日本文化の根幹と認識されています。
明治以降には、思想家・岡倉天心(おかくらてんしん)が英語で出版した「茶の本 (The Book of Tea)」(1906年)など、茶道や禅を海外で紹介するたくさんの活動がありました。

「茶の本」は、新渡戸稲造の「武士道」(「Bushido, the soul of Japan」1900年)と並んで、東洋哲学の本として現在も読まれています。
むしろ海外の人の方が、茶道や禅について、全体の流れや関係性をよく知っていることも。
茶道を習うということは、日本文化を体系的に学ぶことでもあるのです。
代表的な流派
茶道には500もの流派があると言われていますが、すべての流派は、もとをたどると千利休にたどり着くと言えます。
利休以降は、利休の直系(血族)によって開かれた「千家系」の流れと、利休の弟子だった(=血族でない)細川三斎、古田織部などの流れを汲む「千家系以外」に大きく分けることができます。

千家系は、利休の孫である千宗旦(せんそうたん)までは1本で、利休のひ孫の代から3つの茶家に分かれました。
この代表的な3つは、三千家(さんせんけ)と呼ばれています。
表千家(おもてせんけ)
宗旦の三男、江岑宗左(こうしんそうさ)を祖とする流派です。号は不審菴(ふしんあん)。号とは、茶室の名前でもあり、表千家の屋敷全部でもあり、機構の全体も指す正式名。「表千家」は通称です。
表千家の「表」とは、不審菴が表通りに面していたことからそう呼ばれています。
ちなみに表千家では、「茶道」を「さどう」と読むのが一般的です。
裏千家(うらせんけ)
宗旦の四男、仙叟宗室(せんそうそうしつ)を祖とする流派です。号は今日庵(こんにちあん)。裏千家の「裏」とは、今日庵が表千家の不審菴から見て、裏通りに面していることからそう呼ばれています。表千家と裏千家は隣接しています。
時代の変化に積極的に合わせようとする気風が特徴。明治時代、内国博覧会に合わせて立礼(りゅうれい:テーブルとイスを使った点前)を創始したのは裏千家です。
現在、もっとも人口の多い流派となっています。裏千家では、茶道を「ちゃどう」と読みます。
武者小路千家(むしゃこうじせんけ)
宗旦の二男、一翁宗守(いちおうそうしゅ)を祖とする流派です。号は官休庵(かんきゅうあん)。「むしゃ“の”こうじ」ではないことに注意しましょう。
武者小路の名前は、京都市内でのその所在地名から。
武者小路千家では、「さどう」と「ちゃどう」ならどちらでもかまいませんが、原則「茶の湯」と呼びます。
千家系以外の流派
細川三斎や古田織部など、千利休の弟子から生まれた流派もたくさんあります。
千家系以外のはっきりした特徴は、帛紗(ふくさ)を帯の右にはさむこと。
武家が多かったため、刀を差す左側を避けたとの説があります。
茶道体験に必要な持ち物
茶道体験では、手ぶらでも参加できるところがたくさんあります。
それでも、「これは用意すべき」(2点)、「持っておくといいもの」(6点)があります。
お茶を点てる亭主側になるのはずっと後なので、茶道具の説明は省略し、まずは「客作法」に必要な持ち物をご紹介します。
用意すべきもの
・ハンカチ(or手ぬぐい)
手水などで手を洗ったときに使います。マストアイテムです。
・白い靴下(or足袋)
茶室に入る前には、足袋を履き替えるのが心得。茶室や周囲に敬意を払ってのことです。
体験では洋服でしょうから、白い靴下で大丈夫です。マストアイテム。
持っておくといいもの

・懐紙(かいし)
お菓子をのせて食べたり、茶碗を清めたりするのに使う万能紙です。
お菓子をのせる場合は二つ折りにして使い、山(折れている方)を常に自分に向けます。
・菓子切り(黒文字:くろもじ)
お菓子を切って食べるのに使います。
使い捨ての木製のものや、金属製、漆塗りのものなどがあります。
・扇子(せんす)
亭主にあいさつするときや、大事な茶器を拝見するときなど、膝の前に横に置いて「結界」をつくるときなどに使用します。あおぐことはありません。
相手や道具への敬意の表れであり、茶室では常に使用する道具です。
・帛紗(ふくさ)
道具を清めたり、釜のふたを取るときなど、ざまざまに使われます。
使い方を「帛紗さばき」と呼びます。
・古帛紗(こぶくさ、敷帛紗:しきふくさ)
茶碗を拝見するときに下に敷いたり、道具を丁重に扱うときに使用します。
・帛紗ばさみ
これらの道具を入れておくための袋です。
茶道体験の基本的な流れ
茶道体験は、45分程度のものもあれば、数時間かけるものもあり、流れはさまざまです。広間で行うのか、小さな茶室かによっても変わってきます。
体験はお稽古ではないので、つつしみ敬う気持ちと、お茶を楽しむ心があれば大丈夫。きっと亭主(先生)が教えてくれますので、一期一会の気持ちで楽しんでみましょう。
以下、これだけは共通して押さえておきたいことをご紹介します。
1:訪れる前の準備
茶室では、指輪、腕時計、ネックレスなど、装飾品はすべて外します。万一にでも茶器を傷つけないためです。事前に外しておきましょう。
女性は、座ったときにヒザが出ない丈のスカートや、ワンピースなどがいいでしょう。帛紗を付けるので、ワンピースでもベルトがあった方が便利です。
上半身も、お辞儀をしやすいシルエットのものを。髪もまとめますが、金属製の髪留めは避けます。
2:茶室への出入り
茶室に入るとき、出るとき、どちらもいったん座ってから障子を開けるのが基本です(場所によって臨機応変に)。上座、下座をさりげなく意識しましょう。
茶室では空間の制約上、人の前を歩きます。歩くときは、畳の縁(へり)を踏まないように。
3:あいさつ
最初に、亭主に「よろしくお願いします」とあいさつをします。
お辞儀にはていねいな(深い)順に、「真・行・草」(しん、ぎょう、そう)の三段階があることは心得ておきましょう。ビジネスマナーのお辞儀と同じです。

4:お菓子が出てきたら
亭主に「どうぞお取りください」とお菓子を勧められたら、懐紙に取ります。
たいていは菓子器に人数分が乗って出てくるので、前後の人に「お相伴します」「お先に」とあいさつして自分の分を取り、次の人に回します。

干菓子(ひがし)は素手で、練り切りなどの生菓子は添えられている箸や黒文字で取ります。
菓子器は必ず両手で扱いましょう。
5:抹茶のいただき方
抹茶を点てていただいたら、「お点前ちょうだいいたします」とお辞儀をしてから、右手で茶碗を取り、左手の上に乗せます。
その時、茶碗の正面が自分の方に向いているはず。そこを大事にする気持ちを込めて、茶碗を90度ほど回し、正面を避けます。どっち回転でも構いません。

また、何口で飲んでも構いません(だいたい3口ぐらい)。ただ、一口いただいたら少し味わう余裕があるといいでしょう。
抹茶は粉が沈むので、あまり時間もかけないようにしましょう。
最後の一口は、泡などを残さないよう、すっと吸い込むのが美しい所作です。

6:茶碗の拝見
抹茶を飲み終わったら、おそらく茶碗を拝見する流れになるでしょう。茶碗には亭主の思い入れがあるはずです。
茶碗を畳の上に置き(畳の縁の向こう側に置く)、高く持ち上げないよう、低い位置で鑑賞します。
7:体験が終わったら
楽しいひとときを過ごしたら、亭主(先生)にあいさつを。よい茶席は、亭主も体験者も気持ちが和らぎ、すがすがしいもの。これを和敬清寂(わけいせいじゃく)といいます。
体験教室の選び方のポイント
たとえば旅行先で茶道体験をするのも楽しいもの。茶道の流派は地域によっても違いがあり、普段と違ったお点前を拝見することもあります。
観光地の茶室で体験教室がおこなわれていたら、所要時間や道具の要不要などを確認して申し込んでみるといいでしょう。
ずっと通いたいと感じた場合や、習いたい流派ができた場合は、通いやすい距離かどうかが大事になってきます。
教室との相性も大事なので、2~3ヶ所は茶道体験に行ってから選ぶのがコツ。
雰囲気や、自分と合いそうかどうかを見極めてからから決めるといいでしょう。
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【参考文献】
岡倉天心著、夏川賀央訳『茶の本』致知出版社、2014年
岡本浩一『一億人の茶道教養講座』淡交社、2013年
田中仙融『はじめての茶道 本人の目線で点前を学ぶ』中央公論新社、 2013年
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ミキティ山田
旬な話題を求めて、いろいろな場所を取材・撮影する調査員。分厚い牛乳瓶メガネに隠したキュートな眼差しでネタをゲッチュー。得意技は自転車をかついで階段を登ること。ただしメガネのせいでよく転びます。