暑気払いにパーッと冷たいビールを飲みたい!なんて言いますよね。
そんな「暑気払い」とは、いつごろの時期にピッタリの言葉なのでしょうか。蒸し暑いからといって梅雨に使うのは早すぎ?
また、暑気払いになる食べ物・飲み物は?「納涼会」との違いは?
そんな暑気払いのいろんな疑問にお答えします。
※この記事は2021年3月8日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。日々状況が変化しておりますので、事前に各施設・店舗へ最新の情報をお問い合わせください。
暑気払いとは

暑気払いとは、夏の暑さを払いのけ、取り除くという意味。暑さよけの方法をいろいろと工夫することを言います。
そもそも暑気という言葉には、「夏の暑さ」と「暑さからくる病気」という2つの意味があります。また、払い(払う)は、露払い・すす払いといったように、不要なものを取り除く・脇にどけるというニュアンスです。
エアコンなどない時代、冬の寒さは火を利用してしのげても、暑さは対処のしようがないものでした。
そのため食べ物や飲み物を工夫したり、涼しく感じる行事を行って、「体の中にたまった熱」を追い出そうとしたのです。東洋医学的な考え方といえそうですね。
現代では、室内の気温はもちろんコントロール可能。暑気払いは、パーッと冷たいものを飲んだり、涼しげなものを食べたりして、ストレス解消をする…といった使われ方が多いです。
暑気払いの時期

「暑気払い」という言葉には、何月から何月の間だけに使うといったような、期間の限定はありません。
日本には、半夏生(7月2日ごろ)、土用(7月20日ごろ)、大暑(7月22日ごろ)といった夏を表す暦日がたくさんありますが、これらに関係なく、どの時期でも使うことができます。
例えば梅雨の時期に、蒸し暑いから流しそうめんで暑気払いをする…といった言い方もOK。
暑さで元気がなくなる「暑気あたり」という言葉がありますが、暑気は人間の体がどう感じるかが基準。むしろ季節初めの方が体がまだ慣れていない分、しっくり感じられる言葉かもしれませんね。
「暑気払い」と「納涼」の違い

「納涼」と「暑気払い」はどう違うのでしょうか?
納涼は「酷暑のころに使う言葉」とされています。具体的には、梅雨明けからお盆が終わるころまでの約1カ月弱。時間的には、夕涼みを指すことが多いです。
盛夏に水辺や木陰で避暑をする風習は平安時代からあり、源氏物語「六条院釣殿(つりどの)の納涼」には、釣殿(池の上に張り出した建物)で涼む様子が書かれています。水飯(冷水をかけたご飯)を食べたり、お酒を飲んでおしゃべりしたのだとか。

江戸時代になると、川に屋形船を浮かべて涼むことが流行りました。その時の暇つぶし程度の花火がだんだんと大規模化していき、夏の「納涼花火大会」になりました。
整理すると、納涼は「盛夏の夕方~夜に、いっとき暑さを忘れる行為を楽しむこと」を指します。「納涼肝試し」などはピッタリの言葉ですね。
対して暑気払いは「体の中にたまった暑さを追い払うこと(期間限定なし)」といったニュアンス。どちらも近い意味ですが、上手に使い分けるといいでしょう。
暑気払いにおすすめの飲み物:甘酒

お正月に神社でふるまわれるところから、冬のイメージがある甘酒。でも俳句で甘酒は夏の季語なのです。
「ひとよ酒」とも呼ばれ、お米・米麹・水だけを使い、50~60℃に保温しておけば一晩の発酵でできあがります。ビタミンB1、B2、B6、葉酸、アミノ酸、ブドウ糖などを含んでいます。
江戸時代には貴重な「夏の栄養ドリンク」で、行商人が「あま~いあまざけ~」と売り歩くのが風物詩でした。キリッと冷やすと、お米の糖分だけの自然な甘さが美味。
また、甘酒にヨーグルト・フルーツ・シリアルなどを足せば、夏の朝にサッと食べられるヘルシーな朝食にもなります。

暑気払いにおすすめの飲み物:梅ジュース

梅の収穫期は6月ごろ。梅雨の時期に、梅酒を漬け始めるご家庭も多いのではないでしょうか。
梅酒は飲めるようになるまで2~3カ月かかるので、飲みごろは秋口から。でも同時に梅シロップも漬けておけば、こちらは2週間ほどで飲めるようになります。
作り方は、梅酒を作るときのレシピからホワイトリカーを除くだけ。同量の梅と氷砂糖のみです(水は不要)。酢を少し入れてもOK。だんだんと梅のエキスがしみ出して、濃くて甘~いシロップの出来上がり。
クエン酸が豊富で、冷たい炭酸水や水で割って飲めば、さわやかな酸味が楽しめます。
暑気払いにおすすめの飲み物:冷やし飴

麦芽の水飴とショウガの絞り汁だけでつくられた「冷やし飴」。関西・四国エリアではおなじみの、懐かしの味です。
江戸時代の大阪には「あめゆ屋台」があり、暑気払いの滋養飲料として、温かい状態で提供されていました。明治以降、製氷技術が発達して「冷やし飴」となり、気軽な清涼飲料として親しまれたようです。
麦芽由来の自然で優しい甘み。日本版ジンジャーエールと言えそうですね。愛媛県・道後温泉街などでも味わうことができます。
暑気払いにおすすめの飲み物:びわ茶

梅雨にオレンジ色のみずみずしい果実を実らせるビワ。その葉っぱを煎じたお茶は、暑気払いの飲み物として古くから知られています。
漢方では枇杷葉(びわよう)と呼ばれ、生薬として使われています。煎じるとすがすがしい香りがあり、ノンカフェインのさわやかなお茶になります。

江戸時代の行商人を描いた曲亭馬琴の「近世流行商人狂哥絵図」には、「びわようとう~(枇杷葉湯)、第一暑気払い…」と言いながらびわ茶を売り歩く姿が描かれています。
現在でも禅宗のお寺では夏の行事の際、びわ茶をはじめとしたブレンド茶を「三昧湯(さんまいとう)」と呼んで、暑気払いのためにふるまうところがあります。
暑気払いにおすすめの食べ物:ウナギ

夏バテ防止の食べ物といえばウナギ!「土用の丑の日」には食べたいものですね。
江戸中期、平賀源内が売り上げ不振の鰻屋に「本日土用の丑の日」と張り紙をするようアドバイスして、人気になった…という説がよく知られています。
ウナギにはビタミンA、B群、E、Dなどが豊富。特にビタミンAは、100グラム食べれば成人の一日に必要な摂取量に達する量です。
万葉集にも「きみは痩せているから、夏バテに効くといわれるウナギを捕って食べたら?」と友人に宛てた歌が残っているほど。1000年以上昔から暑気払いにはウナギなのですね。
暑気払いにおすすめの食べ物:ナス、キュウリ(夏野菜)

夏野菜は「体の熱を逃がしてくれる」と言われます。理由は、カリウムなどの人体に必要なミネラルを含んでいるから。
厚生労働省「e-ヘルスネット」によると、カリウムはナトリウムを排出する働きがあり、塩分の取り過ぎを調節してくれます。また、細胞の浸透圧を調節して、体液のpHバランスを一定に保つ働きもあります。
夏野菜の代表といえば、ナス、キュウリ。そんな夏野菜をモリモリ食べられるのが、山形県のご当地グルメ「だし」。夏野菜を細かく刻み、醤油やめんつゆをかけるだけのシンプルなメニューです。
暑い日でも不思議なほどご飯が進みます。香味野菜のミョウガやシソ、粘りのある昆布やオクラ、鰹節などを足すとさらにおいしくなりますよ。
暑気払いにおすすめの食べ物:冷や汁

こちらも夏のご当地メニュー。「冷や汁」とは、ダシや味噌で味付けをした汁物料理で、ご飯にかけてさらさらと食べます。暑い夏でも食が進む一品です。
山形県、新潟県、埼玉県、静岡県、宮崎県など、全国各地に冷や汁があり、それぞれレシピも個性豊かです。
一例として宮崎県の冷や汁を挙げると、焼きほぐしたアジ、すりゴマ、麦味噌をペーストにして軽く焼き、ダシ汁で溶いて、キュウリ、ミョウガ、豆腐などを入れるという手間のかかったもの。
冷やしておくと美味しさ倍増。香ばしい香りが食欲をかき立ててくれます。キュウリなど夏野菜がたっぷり取れるのもうれしいところ。
暑気払いにおすすめの食べ物:そうめん

夏の涼しげな食べ物の代表格といえば、そうめんですね。
そうめんは七夕の日の食べ物でもあり、奈良時代にまでルーツをさかのぼることができます。最初は索餅(さくべい)という小麦のお菓子で、だんだんと麺料理に変化していったようです。
旧暦の七夕は8月上~下旬なので、まさに夏の盛り。今でも宮城県の「仙台七夕まつり」(毎年8月6・7・8日)ではそうめんが定番です。
茹でて冷水でキュッと締めたら、その後は氷水に浸けないのが麺の風味を保つポイントです。
暑気払いにおすすめの食べ物:スイカ

スイカは90%が水分で、写真の一切れぐらいのもので30~40kcal程度と低カロリー。でも実は素晴らしい栄養を持っています。
まず、ナスやキュウリと同じくカリウムが豊富。100gあたり120mgと、ナスの半分、キュウリの6割ぐらいですが、一度に食べる量が多いのでたくさん取ることができます。
そして、「L-シトルリン」というアミノ酸が豊富。日本で1930年にスイカから発見された物質で、体内で「アルギニン」に変化します。なんだか栄養ドリンクみたいですね。
アルギニンは肉類やナッツ、牛乳などにも豊富。免疫反応の活性化、細胞増殖を促進する作用が知られています。スイカってすごい食べ物ですね!
暑い日は「暑気払い」と称して冷たいビールやで梅ジュースでパッといきたいところ。まだまだ宴会はままならない時期ですが、家庭で暑気払いに向いている食べ物を食べたり、オンラインで飲み会をしてもいいですね!
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ミキティ山田
旬な話題を求めて、いろいろな場所を取材・撮影する調査員。分厚い牛乳瓶メガネに隠したキュートな眼差しでネタをゲッチュー。得意技は自転車をかついで階段を登ること。ただしメガネのせいでよく転びます。